ドラマをザワザワする3人の不思議な魅力
ドラマがザワザワすると、思わしくない展開にちょっとイラッとするものですが、ムロツヨシ、鈴木浩介、佐藤二朗のザワザワには、「よしきた!」と感じてしまいます。めんどくさいことになっても、クククと笑ってしまいます。そんな不思議な3人の魅力、共通点を探ってみましょう。1.愛らしい人も憎らしい人も同じ顔で演じてしまう不思議
2.個性的すぎる人物をしなやかに演じる不思議
3.どんなコスチュームも違和感がない不思議
4.人間の激しい感情に蓋をしないで表現できる不思議
5.嫌味な人間を演じても愛される不思議
演じることが大好きでたまらない心と演じることを心から楽しんでいる姿勢が不思議な魅力を支えていることに間違いはありません。
みんなを楽しませてくれる少年 ムロツヨシ
印象的だった『勇者ヨシヒコ』シリーズで演じた魔法使い、メレブのマッシュルームヘア。『ごちそうさん』で人気者となった竹元教授のヒゲスタイル。七変化を見せるムロツヨシは小心者、カラ元気、下心、慢心など、本人にとっては切実、周囲から見るとコミカルな心情を目をクリクリさせたり、突如恫喝したりの特異な演技で楽しく見せてくれます。『ごちそうさん』の建築家でもある大学教授の竹元勇三は気難しいものの、主人公のめ以子を「カレーの女神」と絶賛するチャーミングな人物、ムロツヨシ自身のチャーミングさが重なります。
『空飛ぶ広報室』や『ナポレオンの村』では、憎めない公務員を抑えぎみに演じ、『躍る大捜査線』シリーズや『堂場瞬一サスペンス・捜査一課・澤村慶司』シリーズでは、冷静に任務を遂行する信頼される警察官を、『ウロボロス~この愛こそ、正義。』では裏社会の主人公に忠実な部下を好演しました。
究極にとんがった人物から、人間味あふれる市民、律儀で聡明なスペシャリストまで、幅広く演じるムロツヨシから次に何が飛び出すのか、すでに心はザワザワしています。
ジワジワと魅力が効いてくる 鈴木浩介
『LIAR GAME』のきのこスタイルと剥き出しの感情で注目された福永ユウジを演じた鈴木浩介。『緊急取調室』では、ちょっと嫌味な血の気の多い刑事を演じていますが、ハートフルな演技でも評価の高い実力派です。『相棒』Season7で話題となった第7話『最後の砦』では、状況が複雑に絡み合い、追い込まれていく取調べ監督官の下柳を熱演。拳銃自殺を図るまでの鬼気迫る演技は衝撃でした。自分を裏切った妻に対し「やり直そう」と深い愛で懸命に言葉をかけた『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』での演技は、今も印象深く、命をかけて家族を守ろうとした『遺留捜査』での父親役にも、涙したことを覚えています。
レギュラー出演でも、ゲスト出演でも、清々しいまでに魂のこもった演技で存在感を発揮する鈴木浩介。人をバカにしたかのようなムカッとする軽い演技から、心が震える演技まで、全力投球で演じる貴重な俳優です。
放送中の『遺産争続』では、一癖もふた癖もある登場人物のなか、マザコンの一人っ子を演じ、ドラマをザワザワさせています。
目を細めた時、何かが起きる! 佐藤二朗
どんなに個性的な人物を演じても普通に見えてしまう不思議な俳優です。脱いだ靴下のリアリティー、お風呂に入らなかったリアリティー、そんなものまでが映像から伝わってくるようです。個性的でありながら素朴、それが佐藤二朗です。『医龍』で演じた何もかもを喪失した医師の哀愁と心の変化は繊細に表現、『ようこそ、わが家へ』のハチャメチャな敏腕編集長も謎めいて見えました。真正面から見るとヘンなのに、斜め後ろから見ると切なさがある。自由に演じているようで、深みのある演技です。
『タクシードライバーの推理日誌』シリーズでは、主人公に対してどこか気弱な上司を演じています。彼が演じる個性的で素朴な人物には親近感と好感が持てます。
現在『偽装の夫婦』で演じている内向的なマジシャンも人間味があふれていて、作品を愉快にザワザワさせています。
さらにザワザワのうねりを大きくしてくれそうな3人。期待は高まるばかりです。