「心から届けたい」と思う舞台に
携わり続けたい
『ラ・カージュ・オ・フォール~籠の中の道化たち』写真提供:東宝演劇部
「異質感というか、妖艶さというか…。あれも不思議な役で、彼だけは霊の声が聞こえるという設定で、別の空間にいるような、ふわっとした感覚を大事にしていました」
――『ラ・カージュ・オ・フォール』(15年)では10年も芸歴がおありなのに、まるで新人のようにみずみずしい存在感が光りました。
「いえ、まだまだ新人です。実際、他の出演者のみなさんが大ベテランの方がたでしたので、フレッシュさが出せたのかもしれません。市村正親さんや鹿賀丈史さん、新納慎也さんなど、皆さんに“こうしたらいいよ”とアドバイスをいただけて幸せでした。でも、当時は大変でした。日本上演30周年というのもあったし、他の皆さんが何度も出演されているなかで僕だけ“はじめまして”状態だったので、プレッシャーが半端なかったです(笑)。毎日、朝起きてはピアノで自分のナンバーのメロディを弾きながら歌をさらって、ピアノが弾けるわけでもないのに、その曲に関しては目をつぶっても弾けるまでになりました。その甲斐あってなんとか舞台がこなせたのかな。当時のプレッシャーと今回の『HEADS UP!』の新藤君の心境はすごく重なります」
――玉野和紀さん構成・演出の人気シリーズ『CLUB SEVEN』にも3回ご出演されていて、玉野さんにも愛されているのだなあと感じます。
「かわいがっていただいてます。玉野さんはもちろん大先輩だけど、少年のような、無邪気になる瞬間がけっこうあって、それが舞台づくりにも反映されていらっしゃる気がします。既成概念にとらわれずにいろんな発想をされるところが凄いです。その玉野さんから僕はいろいろな面を引き出していただいて…というか、引き出すしかない状況に追い込んでいただいています(笑)。無茶振りが多いんですよ。そこでこれかな、これかなと探して引き出す。でも外した時はショックで、“この引き出しじゃなかった…”と落ち込みますね。まるで瞬発力トレーニングみたいで、公演中は毎日、無茶振りに備えてネタのことばっかり考えています」
――“引き出す”というより“鍛える”ですね(笑)。来年も玉野さん演出の新シリーズSHOW HOUSE『GEM CLUB』に出演予定ですが、今度は若手がぐっと増え、その中で中堅のポジションになってきそうです。
『GEM CLUB』
――今後についてはどんなヴィジョンを抱いていらっしゃいますか?
「必要とされ続けたいなと思いますし、自分の出来る範囲でしかやらない俳優にはなりたくないです。出来なさそうなところ、自分よりも上のステージで挑戦し続けたいですね」
――ルックスから想定される範囲を超えて、意外なタイプのお役もということですか?
「それもありますが、自分がいいなと思う作品、みんなに届けたいと思える作品で演じていきたいと思っています。僕らってやっぱり使っていただく側なので、お話をいただいた時に、もうそれはやらなくてもいいんじゃないか、というようなこともあるかもしれません。でも僕としては、“仕事だからやる”のではなくて、自分自身が成長できて、皆にも“よかった”といっていただけるようなものにどんどん出て行きたい。そういう作品達との出会いを待っているし、自分からも貪欲に探したい。そしてそれが掴めるまで頑張る自分でありたい…と、思っています」
――出ていらっしゃる作品については、相葉さんはすべて燃えてやっていらっしゃる、ということですね。
「もちろん、そうです!」
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言葉を選びながら、じっくりと確実に、思いを言語化してゆく相葉さん。その堅実な姿に、彼の「強い思い」は決してひとりでに叶ったのではなく、人知れぬ努力に裏打ちされてこそ現実のものとなってきたのだと感じられます。そんな相葉さんが今、情熱を傾ける、異色の舞台。作り手も観る人も、改めて“舞台愛”をシェアできる、スペシャルな作品が期待できそうです。
*公演情報*ミュージカル『HEADS UP!』2015年11月13~23日=KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉、11月26~29日=兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、12月3日=札幌市教育文化会館大ホール、12月13日=倉敷市芸文館ホール
*次頁に『HEADS UP!』(2015年)観劇レポートを掲載しました!