笑いのツボは人それぞれと再認識
去る10月11日に放送された「キングオブコント2015」は、例年以上に視聴率が良かったと聞きました。確かに出場者による渾身のコントに加えて、審査員のさまぁ~ず、バナナマン、松本人志とMC浜田雅効のやり取りも抜群に面白く、3時間ひきつけられました。翌日からは、ネット上にブログや掲示板等に各々のコントの感想が続々と掲載されましたが、面白いことにその評価がてんでんバラバラなんですね。特にいわゆるシュール系と呼ばれるコントなどでは、まっこうから食い違う意見をいくつも見かけました。
それらを踏まえたうえで、改めて審査員陣のコメントを聞き直してみると、何よりも観客に受けていたかどうかを重視していたことに、改めて気づかされます。松本人志なんて、低い点を付けたコンビに対し「昔の自分やったら好きだったかも」とまで言い放ってます。笑いに絶対的評価は存在しないんだということを強く思い知らされました。
高得点コントに共通する要素とは……
ということで今回は個人的評価とは別に、全体を通して感じたある意味「笑いのトレンド」ともいえる傾向について考えてみたいと思います。今回優勝した若手のコロコロチキチキペッパーズをはじめ、ロッチ、バンビーノの上位3組のコントには、これまで数多く作られてきた緒先輩の作品ではあまり見ることのなかったある傾向が、顕著に現れていたことを、お気づきになったでしょうか?その説明の前に、ごく簡単ですが一般的なコントの構造について説明させていただきます。2人で演じるコントの大部分では、演者AとBの間に対立軸が存在し、2人がぶつかり合うことで生じる「火花」が笑いに転化され、その連続がすぐれたコントを生み出してきました。
ところがコロコロチキチキペッパーズらのコントでは、その対立軸をわざと緩やかなものに設定し、極力火花の散らない方向へと持っていきます。
キツイ「ツッコミ」が不在なコント
1回目に演じた「天使と少年」のコントでは、天使との約束を少年は何度も破ってしまいますが、従来の作り方でいけば天使は少年にキツい「ツッコミ」を入れていた筈です。ところがナダル扮する天使は、内心むかつきながらもできるだけ優しい対応を心がけます。こうした複雑でありながら、どこかリアルさを帯びたレスポンスそが、これからのコントの潮流という予感さえしました。