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「マンションみらいネット」の活用が進んでいない

国土交通省の補助事業として「マンションみらいネット」の運用がスタートしてからもうすぐ10年となりますが、その活用は思うように進んでいないようです。現在の状況はどうなっているのでしょうか。

執筆者:平野 雅之


国土交通省の補助事業として公益財団法人マンション管理センターが運用している「マンションみらいネット」をご存知でしょうか。

マンション管理のレベルアップを支援すること、マンション購入希望者に対して管理情報を提供すること、良好管理マンションに対する評価獲得の支援をすること、などを目的に2006年4月に本格運用が開始されたサイトです。

しかし、(少し古いデータになりますが)2008年3月27日付の朝日新聞報道によれば、「マンションみらいネット」への登録がわずか約350件にとどまっていたようです。

このうち約280件は試験運用時(登録料無料)のもので、2006年4月の本格運用開始後の登録(登録料は単棟型で5万円あまり)は約70件とのことでしたから、2年間で約350万円にすぎません。登録料だけでは、担当職員1人分の給与もまかなえていないことでしょう。

その後に登録数アップを目指した制度改定などもあり、「さすがに今はもっと増えているだろう」と調べ直してみたところ、2015年10月時点での登録は382件でした。

「あれっ?」という感じですが、7年あまりの間に30件ほどしか増えていないのです。なかには登録を更新せずに取りやめたマンションもいくつかあるでしょうが……。

ちなみに最も登録マンション数が多いのは東京都の83件、次いで神奈川県47件、千葉県43件、大阪府35件といったところですが、0件が12県、1件にとどまるのも10県となっています。東京都の分譲マンションは5万棟あまりにのぼりますから、登録率にすれば0.2%にも届きません。

この状況では、少なくとも「マンション購入希望者に対して管理情報を提供すること」という目的にはまったく寄与することができないでしょう。

上記の新聞報道によれば、登録が進まないことについてマンション管理センターは「管理の重要性が一般にまだまだ理解されていないのも一因」としていたのだそうです。

しかし、そうではなくて「管理の重要性は理解しているけれど、マンションみらいネットに登録する必要性が感じられない」というのが一般的な捉え方ではないでしょうか。

「マンションみらいネット」は国土交通省やマンション管理センターの「商売」ではありませんが、民間のネット事業であればとっくに閉鎖されているようなやり方を続けていれば、それが普及することは到底考えられません。

これからの中古住宅流通を考えれば、マンション管理に関する情報提供の重要性はもっと高まるはずですし、それを蓄積していくことも大切でしょう。

「マンションみらいネット」がなぜ必要なのか、登録をすることでどのようなメリットが生まれるのか、マンションの資産価値にはどう影響するのか、中古マンション購入者にはどのようなメリットがあるのかなどについて、「消費者の視点」でもっと明確にすることが望まれます。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2008年4月公開の「不動産百考 vol.22」をもとに再構成したものです)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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