海外のメーカーやブランドの商品は通常、それらの日本法人や正規代理店などを通して輸入、販売されます。これに対して、正規のメーカーやブランドとは関係のない会社や個人などが買い付けて輸入・販売しているものを「並行輸入品」といいます。

医薬品の場合、国内で未承認の薬剤を治療のために医師が輸入するのが一般的です。国内で正規に流通しているものは医薬品医療機器等法に基づいて、品質や有効性、安全性の確認がなされています。しかし、個人輸入される外国製品にそのような保証はありません。

医療用医薬品には医師の処方箋が必要です。シアリスやバイアグラ、レビトラなどのED(勃起不全)治療薬にも並行輸入品はありますが、その多くは正規のメーカー品を隠れミノにした偽造医薬品と考えられています。

ED治療薬を取り巻く偽造医薬品の様子はどうなっているのでしょうか。

印刷用インクで着色された偽造医薬品も

近年では、並行輸入品と謳(うた)いながら、正規品とはまったく関係のない偽造品やコピー商品が日本国内に持ち込まれています。そのほとんどがネット通販という形で購入者の手元に届きます。

ED治療のバイブルである『ED治療ガイドライン2012年版』によると、ED治療薬の偽造医薬品の場合は、

・表示通りの薬効成分が含まれないもの(表示に対して0~200%)
・汚染物質または不純物(タルカンパウダー、塗料、印刷用インクなど)を含むもの
・健康被害をもたらす薬物(アンフェタミン,カフェインなど)を含むもの
などが報告されています。

偽造医薬品に含まれている血糖降下薬のために、重い低血糖発作をきたした症例も報告されています。

真正品と見分けがつかぬほどの精巧さ

外観では真正品と見分けがつかないくらい精巧につくられている偽造医薬品

外観では真正品と見分けがつかないくらい精巧につくられている偽造医薬品

偽造医薬品の多くは、真正品と外観で識別することが困難なほど極めて精巧につくられています。真正品を隣に並べても、見分けるのが難しいものも少なくありません。

偽造医薬品の製造環境は不衛生であることも多く、また流通経路における品質管理にも問題があります。アパートの一室で手作業でボトル詰めしていたり、適当なポリ袋にバラで入れた状態で郵送したりすることも珍しくありません。

さらに、流通ルートの主流であるネット通販では、サーバー所在国と製造発送国が一致しないこともあります。サーバー所在国、製品発送国、支払い国などの情報から、真正品と偽造医薬品を見分けることは不可能に近いということです。つまり「米国から送られてくるから本物だ」などと言い切ることもできません。

偽造医薬品の多くは、インターネット上では「本物である」「海外で製造されたジェネリック(後発)医薬品である」などと偽って販売されているので、十分に注意しなければなりません。

ネットで入手したED治療薬の6割が偽造

日本とタイで入手したネット通販品の55.4%が偽造品であったという調査結果も

日本とタイで入手したネット通販品の55.4%が偽造品であったという調査結果も

少し前の資料ですが、2008年8月から2009年4月の間に日本とタイで行われた調査では、ウェブサイトを通じて入手されたED治療薬3種のうち、約6割にあたる55.4%(日本43.6%、タイ67.8%)が偽造品でした。

ジェネリック医薬品が出回り始めて薬の種類が増えたことや、流通の仕組みがより複雑になってきたことなどを考え合わせると、現在の偽造医薬品比率は、この調査の時よりもさらに高まっていると予想されます。

偽造医薬品の使用は、単に治療効果が得られないことだけではありません。見過ごせないのは、健康被害を招くリスクがあるということです。場合によっては死に至る可能性を含んでいるので、警戒しなければなりません。

あなどれない、偽造医薬品の副作用

ED治療薬は処方箋医薬品ですから、服用するには医師の診察や適切な指導を受けることが必要です。EDを疑われる人の多くは、生活習慣病の合併症を抱えているからです。

それにもかかわらず、手軽だからとか、安いからとかいう理由でネット販売を利用する人が多いのが実情です。こうした人たちは医師の診察を受ける機会を逃しているため、ひとつ間違えれば健康被害の恐れがあります。

偽造医薬品の服用で副作用が出た場合にも、何が含まれているか明らかでないため、適切な処置ができません。対処方法が分からないと、重症化するリスクは格段に高まります。

正しい診察を受ければ、全身状態や合併症の確認、服薬指導などをしてもらえます。EDの症状を改善する早道は、ネット販売でED治療薬を安易に購入するのではなく、自分の症状に応じた適切な治療を受けることなのです。

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