そこで、今回は戸建て住宅の地盤補強のあり方に関して考えていきます。先日。私が取材してきた新たな補強方法についてもご紹介します。
地盤補強への関心を高める契機となった傾斜マンション問題
横浜のマンション傾斜の問題は、大手不動産会社が販売主で施工会社もよく知られた企業が名を連ねていることもあり、建設業界・不動産業界における重大なスキャンダルとして、連日マスコミによる報道が行われています。それによると、傾きが確認されている建物だけでなく販売された全ての建物を建て替えることも検討されているといわれています(2015年10月24日現在)。マンションは多くの人が暮らすもの。合意形成は難しく、問題の収拾に時間がかかると思われますが、住民の方々のためにも早めに解決策が固まることを願いたいものです。
さてこの問題は、通常はあまりクローズアップされない、住まいと地盤の関わりについて改めて考えさせられる機会となったように感じられました。地盤は、建物が完成した後で不具合を解消することが難しい箇所であるため、私たちはそこにどんな注意点があるのか、もっと理解しておくべきです。
マンションやビルは当然ながら戸建てに比べて非常に重量があるため、建物を地盤にしっかりと固定しなければなりません。このため地下にある強固な地盤まで数十メートルにわたり杭を打ち込むのが通常です。
今回の問題は、その杭が強固な地盤まで達しておらず、しかも地盤調査などのデータが改ざんされていた、というところにあります。これは余談ですが、マンションであれ戸建てであれ造るのは結局のところ人です。
ミスか作為的かはともかく、人が関わる以上、何がしかの問題が発生する可能性は否定できないということです。横浜の傾斜マンション問題はそのことがよく表れた出来事とも指摘できそうです。
戸建て住宅における軟弱地盤液状化対策はどうやっている?
話を戻すと、戸建て住宅はマンションに比べて軽量であるため地盤に対する対策は比較的少なくすむと思われがちですが、決してそうではありません。例えば、東日本大震災では地震の揺れそのものによる被害も発生しましたが、液状化現象により住宅が傾いた事例も数多くみられました。液状化は、千葉県浦安市の湾岸沿いの埋め立て地で発生したことを覚えていらっしゃる方も多いでしょうが、実は内陸のエリアでも各地で発生していました。例えば、かつて河川に近い場所であったり沼地や湿地、田んぼだったところ。つまり、そこを埋め立てたて住宅地として造成された場所です。
東日本大震災では東日本エリアの広い範囲で確認されました。このことから、今後発生が懸念される大地震、首都圏直下型地震や東南海トラフ地震などが起こった場合、全国各地で液状化現象が起こる可能性があります。
では、戸建てにおける地盤強化はどのように行われるのでしょうか。住宅を建設する際にはまず地盤調査を行い、建築予定箇所がどのような地盤なのかを確認します。そして軟弱な地盤は、地盤を押し固めて液状化をしないようにする施工が行われます。
さらに補強が必要な場合はコンクリートなどにより地盤を柱状に強化する方法や、鋼管の杭を地中の固い地層にまで何本も打ち込み、その上に基礎を乗せるという施工方法もとられることがあります。
ところで、2015年9月に栃木県や茨城県で発生した集中豪雨と堤防決壊で多くの住宅が流出被害に遭いましたが、その中で流されず残った「白い家」が話題になりました。この住宅が流されなかったのは鋼管杭による地盤対策を行っていたため。水の流れは基礎の下の土は流しましたが、その後は鋼管杭の間を流れ、杭の上の建物が無事残ったのです。
次のページでは、最近開発された新たな施工方法をご紹介しながら、さらに住まいと地盤の関係について考えていきます。