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「距離との戦い」を楽しむ、2015菊花賞

10月25日に行われるG1菊花賞は、3歳馬による「三冠レース」の最終戦。そのレースの大きな特徴は、3000mという長い距離を走ることです。出走馬すべてにとって“初体験”となるマラソンレースは、競馬の奥深さが詰まった戦い。ということで、距離の観点から2015菊花賞のプレビューをしてみます。

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド

三冠最終戦で待ち構える、「3000m」の壁

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昨年の菊花賞を制したトーホウジャッカル(写真 JRA)

2歳の夏以降にデビューする、JRAのサラブレッドたち。いわば“新人時代”にあたる2歳を終えると、翌3歳時に「三冠」と呼ばれる3つのレースを目指します。

4月:G1皐月賞(芝2000m/中山競馬場)
5月末~6月初頭:G1日本ダービー(芝2400m/東京競馬場)
10月:G1菊花賞(芝3000m/京都競馬場)

この3レースは、もっとも格式高い「クラシックレース」とされており、3歳馬のみの戦い。いわば同世代の王者決定戦で、多くの3歳馬がタイトルを目指して挑んできます。そして、その3レースにおける“最終戦”が菊花賞。2015年は、10月25日(日)に決戦の日が迫っています。

菊花賞を見る上で、最大のポイントとなるのは3000mという距離。JRAの競馬は1000m~3600mまで行われます(※障害レースを除く)が、3000m以上のレースは年間に6つしかない貴重なもの。そして何より、3歳馬が出られる3000m以上のレースでは、この菊花賞が最初になります。つまり、菊花賞に出る馬たちにとって、3000mは初めて。未知の距離に挑むこととなります。

二冠目となる日本ダービーは2400m。それから600mの距離延長ですが、競馬の世界ではこの600mの違いが大きなものになります。実際、最近は3000mという距離を嫌って菊花賞に向かわず、別路線で戦う3歳馬も増えているほど。3000mに挑むことさえ、大きな勇気がいるのです。

実績ナンバーワンの馬に潜む、距離への不安

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実績なら一番のリアルスティール。春には二冠のドゥラメンテを負かしたことも(写真 JRA)

2015年の菊花賞において、メンバー随一の実績を誇るのがリアルスティール。この馬は、三冠初戦の皐月賞で2着と好走した実力者。そして日本ダービーでは、のちに骨折が判明しながらも、4着と上位を確保しました。

皐月賞のレース映像(リアルスティールは赤帽の5番)

今年の三冠戦線は、ドゥラメンテという馬が皐月賞と日本ダービーの二冠を達成。しかし、こちらは大きな骨折をしてしまい、菊花賞には参戦しません。となると、“勝たなければならない立場”となったのがリアルスティール。もともとは、ドゥラメンテとの「二強」とされていた馬。ライバル不在の中、最後の一冠を落とすわけにはいきません。

がしかし……。そのリアルスティールにつきまとうのが距離不安です。皐月賞のときは完璧なレースで2着。しかし、400m伸びたダービーでは4着と着順を下げました。また、競走馬の距離適性を考える上では、馬体の作りがひとつの要素になりますが、リアルスティールのように胴が短くコロンとした丸い体型は、長距離向きではないと考えられます。これも3000mへの対応を不安にさせます。

さらに、3000mの長距離というと「スタミナ」だけがカギと考えがちですが、この距離の怖さはそれだけではありません。重要なのは「折り合い」です。

全馬初体験の長距離となれば、どの騎手も前半はゆっくりと走って体力を温存しようとします。しかし、馬はいつも通りのレースと思いますから「いつものペースで走らせろ」となるはず。でも、騎手はそれを許しません。そのとき、馬がすんなり納得してゆったりしたペースに合わせればいいのですが、それができないと騎手と馬の折り合いがつかず、余計な体力を消耗してしまいます。いわば馬と騎手がケンカをしている状態ですね。

今春のリアルスティールは、レースを走るごとに少しずつ折り合いの難しさを出してきました。これまでの距離でも「もっと早いペースで走らせろ」という素振りを見せているので、3000mではさらにそれが強まるのでは……という不安です。

日本ダービー以来となった、9月のG2神戸新聞杯(芝2400m/阪神競馬場)。ここで2着となったリアルスティールは、そういった不安渦巻く中で菊花賞に向かいます。果たして、最後の一冠をつかむことができるのでしょうか。注目してみましょう。

神戸新聞杯のレース映像(リアルスティールは赤帽の5番)

さて、3000mの距離に不安を感じる馬はそれだけではありません。次ページでは、「血と距離の戦いに挑む馬」を紹介します。

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