誰かの優しさのために奮闘する
『コウノドリ』(金曜22時/TBS)
新生児の可愛さだけで、幸せな気分に浸れる作品です。奇跡的な手術の連続はなく、過剰にエンターテインメント化しない雰囲気は病院の日常を感じさせます。綾野剛演じる主人公鴻鳥サクラは柔らかい印象ですがテキパキと指示を出します。クールな人、無関心な人などクセのある人物を演じることが多い綾野剛のハートフルな役を観て、素直に素晴らしい俳優だと感じます。物語は日本が抱える社会問題と医療問題をうまく絡ませ見せてくれます。そして解決策そのものでなく、社会に参加する一人として私たちがどうあるべきかを、そっと教えてくれます。生命の尊さと強さを、誰かの熱弁からでなく、現場の空気感から視聴者が心に刻んでいく、そんなドラマになりそうです。
身近に感じるリアリティ
『デザイナーベイビー』(火曜22時/NHK)
妊婦である刑事の速水悠里<黒木メイサ)が所属する警視庁特殊犯捜査係は、エンターテインメント性のある部署名ですが、驚くほど地味に描かれています。たとえば無線連絡にしても、臨場感あふれる雰囲気はありません。現場は本来こんな雰囲気なのかなと思わせます。原作は現役の産科医。タイトル通りの未知の世界のリアリティは医学の抱える深刻な問題を提示し、それぞれの立場の強い思いが感じられ見応えは十分。「カッコイイ」現場としない作品は興味深く、好感が持てます。
クールな印象が強い黒木メイサが生活感のある人物を自然体で演じているところも巧み。渡部篤郎、渡辺いっけい、松下由樹、安達祐実、手塚とおる、個性的な演技派ぞろいの1作は気が付くとグイグイ引き込まれる面白さです。
ほかにも 『破裂』(土曜22時/NHK)無痛~診える眼~』(水曜22時 /フジテレビ)など、医療現場の作品もコメディ、エンターテインメントとは違う新しさを感じるものが多く、気になるところ。『下町ロケット』(日曜21時/TBS』なども加わり、秋のドラマは大豊作となりそうです。