局地的な集中豪雨による被害が毎年のように発生しています。2015年9月には鬼怒川などの氾濫や堤防決壊で大きな災害が起こり、いまも不自由な生活を強いられている人が少なくありません。2014年8月の広島市における土砂災害も記憶に新しいのですが、何年か前には首都圏でも床上・床下浸水や落雷・停電事故が相次ぐなど、都市型水害も増えているといえるでしょう。
気象庁による「雨の強さと降り方」の解説では、1時間に50ミリ以上80ミリ未満の雨は「非常に激しい雨」とされ、「滝のような雨がゴーゴーと降り続き、都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込む場合がある」「マンホールから水が噴出する」「土石流が起こりやすい」などといった説明が並んでいます。
これが1時間に80ミリ以上となれば「猛烈な雨」で「息苦しくなるような圧迫感があって恐怖を感ずる」「雨による大規模な災害の発生するおそれが強く厳重な警戒が必要」とのことです。
気象庁による解説は「80ミリ以上」までですが、近年は1時間に100ミリ以上の雨を記録する例も少なくありません。1976年~1995年の年平均が2.2回だったのに対して、1996年~2005年の年平均は4.7回で、2倍以上に増えているようです。
ちなみに、気象庁の記録による過去最大値は1999年10月27日の千葉県香取および1982年7月23日の長崎県長浦岳における1時間あたり153ミリとなっていますが、「恐怖を感ずる雨」(1時間に80ミリ)のおよそ2倍の量は、とても想像することができないでしょう。
それはともかくとして、これまでは数年に1回あるいは数十年に1回の発生確率として定義されてきたレベルの集中豪雨が、やがて毎年1回の頻度で起きるような状況にならないともかぎりません。それと反比例するかのように、都市の宅地開発で地面の保水・浸透能力は失われ、都市型水害がますます発生しやすくなっているともいえます。
集中豪雨、局地的豪雨などによる土砂災害や河川の氾濫などに十分な警戒をすることがもちろん大切ですが、大都市の平坦部においても水害への備えが欠かせません。
都市の公共下水道は1時間あたり50ミリの雨に耐えることを想定したものが多く、近年の改良工事でも80ミリ程度の雨に対応するものです。したがって、1時間に100ミリを超えるような雨が降り続けば、下水道の処理能力が追いつかずに床下浸水、床上浸水、あるいは住宅の排水口から水が溢れ出したり地下車庫が水没したりすることもあるのです。
これから先のことを考えれば、地震や水害に強い「宅地性能」への配慮もこれまで以上に重要となります。とくに、水害では個々の宅地の状態だけでなく、周囲の地勢・高低差、近くの都市河川や排水路の状況、前面の下水道菅の種別や口径など、さまざまな要因が絡んでくるため、不動産業者による従来どおりの物件調査だけでは足りないでしょう。
地下室や半地下車庫を造る場合には、雨水の浸入防止対策や排水能力の基準をこれまで以上に厳しく考えることも必要です。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年8月公開の「不動産百考 vol.23」をもとに再構成したものです)