「タラソテラピー」は海を利用した自然療法
「タラソテラピー(タラソ)」は海を利用した自然療法(健康法)です。日本語では「海洋療法」と訳されます。海水や海藻、海泥、海岸の空気・気候を利用して自然治癒力を増し、健康回復を行うものです。海の力を使ったタラソは体にも心にも効く
もちろん、結果として美容にもつながっていくのですが、エステなどで行われる海藻パックは、タラソのごく一部に過ぎません。日本ではこのような美容のイメージが強いのですが、ヨーロッパ各国では医師の指導のもとで行われている科学的な療養なのです。
“海水を利用する”とは?
タラソ施設では海水を温めて温泉のように使用します。日本では、海水に浸かるというと夏に行う海水浴を思い起こす人が多いでしょう。海水には温泉と同じように、保温効果や筋肉の緊張を改善する効果が見込める
しかし、温泉医学の観点からみると海水は1Lに食塩が35g以上も含まれるとても濃い「食塩泉」とも言えます。そのため、海水には温泉と同様に保温効果や筋肉の緊張を改善する効果が見込めるのです。
また、フランスの科学者カントンは、海水のミネラル分は血液の液体成分である血漿(けっしょう)と組成が似ていることを1904年に初めて発表しました。今でも海水は赤ちゃんを包む羊水に近い、と表現するセラピストもいます。人体と海水は元々とても近しい関係にあると言えるでしょう。
私も先日奄美にあるタラソ施設に訪れてきました。33-36℃という体温とほぼ同じ「不感温度」に温められた海水プールにぷかぷかと浸かっていると、時間を忘れそうになるほど、気持ちが良いものです。
海水の浮力作用も見逃せない
海水は温まりが強いだけでなく、塩分が濃い分、水道水よりも浮力が強くなります。その分、水道水に比べると2倍以上も体重は軽くなり、海水プールではふわふわと体が浮くようになります。海水プールでのこの強い浮力が、平衡感覚を刺激し、陸上では使わない筋力を鍛えます。海水プールを歩くだけで、楽しく全身の筋トレができるという訳です。さらに、海水中で簡単な体操を行えばさらに筋トレ効果が強まります。また、特に下肢には強い水圧がかかり、体液の循環を促しむくみを解消します。
都心部では再現が難しい「海洋性気候」
眼に見えないタラソの重要な要素が「海洋性気候」です。タラソでの海水や海藻パックの利用は具体的で分かりやすいのですが、海の近くならではの気候が、実はタラソにはとても大切です。タラソに重要な「海の風」
海から吹く風は清浄で塩分を含み、カルシウムやマグネシウム、ヨードといったミネラル分が豊富です。これらの成分を含む湿った空気がリラックス効果をもたらし鼻やのど、気管にも優しく作用します。海岸に滞在し、海の風を吸い込むことで自然と体調が整うのです。
タラソを行うには場所選びが大切
以上のように、タラソは海水や海の気候を利用した自然療法です。そのため、汚染のないきれいな海が必須です。また、あまり暑すぎる場所や寒すぎる場所も好ましくなく、温和な気候の場所が最適です。日本国内にもこうしたタラソ施設が何か所かあります。もし施設を訪れることが難しい場合は、近くのきれいな浜辺に行って、ゆっくり深呼吸するだけでもいいでしょう。日本は海に囲まれた島国。海に親しむのは夏の海水浴だけではありません。タラソを意識し、もっと海を活用して健やかになりましょう。