不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

店舗兼用住宅などを考えるときの注意点

住宅街の中でレストランを開きたい、自宅で独立開業したい、などという場合でも、店舗や事務所などの兼用住宅には一定の制限があります。兼用住宅を計画するときに考えておきたい注意点、ポイントなどをまとめました。(2018年改訂版、初出:2015年9月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.072】

店舗兼用住宅の例

店舗などとの兼用住宅は立地と規模の制限だけでなく税金にも要注意


自宅で小さなお店をやりたいと考える人は少なくありません。当初から住まいと店舗などの兼用住宅(併用住宅)を建てたり買ったりするだけでなく、子育てが一段落してから妻の趣味を生かして、あるいは夫の退職後や老後に、自宅の一部を改装して店舗にすることも考えられます。

商店街や幹線道路沿いでなくても、住宅街の中で隠れ家みたいなレストランを開きたいという場合や、何らかの資格を取って自宅で独立開業することもあるでしょう。

店舗や事務所などの兼用住宅が、どんな立地でも、どんな規模でも認められるわけではなく、法律による規制などもあります。ここでは経営ノウハウやマーケティングなどの話は抜きにして、不動産購入の観点から兼用住宅(併用住宅)についての主な注意点をまとめてみました。

まず、考えなければならないのは用途地域です。とくに「第1種低層住居専用地域」は制限が厳しく、たとえ兼用であっても一定の要件を満たすものでなければ認められません。

第1種低層住居専用地域では専用の店舗などをつくることができないほか、兼用住宅でも「延べ面積の2分の1以上が居住用であること」「店舗などの部分の床面積が50平方メートル以下であること」という制限があります。

仮に延べ面積が80平方メートルの建物なら、40平方メートル未満の店舗などしかできないことになるでしょう。

物販店や食堂、喫茶店、事務所、理髪店、美容院、学習塾、各種教室、アトリエ、工房などを兼用住宅で開業することができるものの、クリーニング店は取次のみ、原動機を使う店舗などの場合は合計出力0.75kW以下とする規定などもあります。

なお、それぞれの地区で定められた建築協定などによって、住宅以外の用途が制限される場合もありますから、事前によく調べておくことも必要です。

また、兼用住宅で実際に生活するうえでは、居住用部分と店舗部分などをきちんと分けることができずに曖昧なスペースも生まれてしまいがちですが、少なくとも設計図面では明確に区分しておくべきでしょう。

第2種低層住居専用地域の場合は制限が少し緩く、兼用住宅だけでなく専用店舗などを建てることも可能となりますが、店舗、飲食店などは床面積が150平方メートル以内で、かつ2階以下でなければなりません。

それ以外の用途地域であれば、工業専用地域を除いて、兼用住宅の規模であればほとんど問題はないでしょう。

次に、税金のことについても考えなければなりません。ここでは詳しい説明を控えますが、登録免許税不動産取得税などにおける軽減措置は主に「専用住宅」を対象としたものであり、原則として兼用住宅は適用対象外となります。

登録免許税の場合は「延べ面積の90%以上が居宅なら適用する」という規定もありますが、店舗などの部分が10%未満では使いみちが限られるでしょう。

固定資産税における新築住宅の軽減措置や住宅ローン控除では、延べ面積の2分の1以上が「専ら居住用」であれば適用することができるものの、住宅ローン控除の適用額は面積の比率に応じて按分しなければなりません。

また、売却時における各種の税金の特例も主に居住用財産を対象としているため、店舗などの部分については適用することのできないケースが多くなります。

お店などをやるのであれば、まず商売のことを優先して考えるべきであり、税金の軽減措置などに左右されるのは本末転倒ですが、事業計画を立てるときにはしっかりと調べたうえで検討しておくべきでしょう。


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