また中学入試に英語を導入する学校などが出てきて、今後の中学入試の世界はどのように変化していくのかについても不安を感じてらっしゃる保護者の方もいらっしゃることと思います。今回は2016年春の中学入試の特徴を大胆に予測し、さらに10年後の中学受験の未来予想図を描き出してみたいと思います。
少子化の影響で年々中学受験生は減り続けている
総務省の発表によりますと、2015年5月の時点での子どもの数は全国で過去最低の1617万人となり、何と34年連続で減り続けているそうです。この数値は国家基盤を揺るがすような大問題ではありますが、中学受験業界においても大変深刻な状況と言わざるを得ません。中学受験率の高い首都圏に限って言いますと、2016年2月の入試時期に小学6年生である生徒の数は、前年比よりも4千人も減少して34万2千人となります。中学受験の母体の数は年々減り続けていることがわかります。中学受験者数のピークは2009年で、推計6万5千人ほどいましたが、今春(2015年春)の受験者数は5万4千人程度と推計され、やはり減少傾向にあります。
しかし、中学受験生のほぼ全員がどれか1つは受験すると言われる3大模試(四谷大塚合不合判定テスト・日能研公開模試・首都圏模試)の受験者数をみてみますと、2016年2月に中学受験をする生徒数は、2015年に比べて微増となっており、母数が減った影響はそれほどないように思われます。つまり受験倍率の観点から言えば、2015年と2016年の入試には難易度の変化はほとんどないと考えてよいでしょう。
2015年春はサンデーショックといわれたがその反動は…
続いて「サンデーショック」の反動について考えます。「サンデーショック」とは、2月1日が日曜日に当たる場合、キリスト教プロテスタント系の私立中学の一部の学校が、教会へ行く日曜日に入試をおこなうことを避けるため、入試日を2月2日にずらし、それに伴ってプロテスタント校以外の多くの学校に影響が及ぶことをいいます。わかりやすい例を挙げますと、例年なら同一入試日で併願が不可能な桜蔭中と女子学院中が、女子学院中がサンデーショックの年には入試日をずらすために、併願が可能になる、といった感じですね。前回のサンデーショックは2009年、前々回は2004年でしたが、いずれの年もサンデーショックで受験生が併願校を大きく動かしたため、その翌年には揺り戻し現象により、やはり中学入試が大きく動きました。(参考記事:2015年中学入試 サンデーショックの併願作戦)
それでは2016年はどうなるのでしょうか。実は2015年の「サンデーショック」による併願パターンの変化は、前回・前々回と比べるとずっと小幅にとどまったのです。これは近年の中学受験に対する考え方の変化が基底にあります。最近の中学受験では価値観の多様化が進み、以前のような「なにがなんでも偏差値の高い学校へ」という考え方が薄らいできています。むしろ「本人の実力に見合った学校を選ぶ」という傾向が強まり、その結果あまりチャレンジはせずに安全志向の併願パターンを組むという受験生が増えてきました。
こうしたことから、先の例に挙げた「桜蔭→女子学院」という2大トップ校を併願する生徒が減少し、サンデーショックの年にもかかわらず、受験生の併願パターンにあまり大きな影響を及ぼさなかったよ考えられます。そのため、来春(2016年春)の入試においても、揺り戻しによる変動は大きくないと予想されます。
次ページでは、2016年と10年後の中学受験を、大胆に予想します。