V系バンドに求められる専門性・独自性
日本武道館で公演を果たした己龍
以前は、バンドがメジャーデビューをすると、楽曲も容姿もポップになってしまう、と揶揄されたものだが、近年はインディーズシーン内においても、例えば中高生の共感を得られるような歌詞の提供など、特に若い層をターゲットにし需要を目論む傾向も見られるようになった。
しかし昨年末から再び個性的且つラウドなバンド、わかりやすく言えば黒いイメージのヴィジュアル系っぽいバンドの台頭が際立っており、万人受けよりとことん独自性を究めたバンドが勢いを持ち、固定したファンをつけ動員を拡大している。
代替の効かない色濃いバンドカラー、息長く活動をしてきた中堅、それが冒頭に挙げた今年活動終了を発表したバンドの共通の特徴として挙げられるが、彼らが長く支持され続けてきたのは、大多数の需要に寄せた『みんなの好きそうなもの』よりも、『自分たちがかっこいいと思うものを伝える』という貫いた信念で道を切り開いてきたからだろう。
YOSHIKIは現在のヴィジュアル系についてインタビューで次のように語っている。
『どんなにジャンルが細分化されようと、またその形が変わってもいいと思いますね。彼らのそうやってがむしゃらにがんばる気持ちが大切で、またそういう人たちの中から、次のスターだったり、後世に影響を残す人が現れるんだと思います。』
『ヴィジュアル系とは、前に進んで行く破壊的なポジティブさや勢いの伴うジャンルだと思います。まだそれを僕自身も持っていると思います。』
出典:2014年7月28日掲載 BARKSインタビュー
SNSや動画サイトなどのツールの発達によって、エンターテイメントの幅もぐんと広がりを見せ、人々の関心を向ける矛先が大きく増えた今、今後もより各ジャンルに専門性が求められる傾向にあるといえる。V系バンドに対してもそれは同じだ。
そんな中、和をコンセプトとし独自のカラーを貫いてきた<己龍>は、3度にも渡る47都道府県巡業(ワンマンツアー)を行ない、今年7月31日本武道館にて単独公演を達成。それはV系界に明るいニュースをもたらし、各方面から称賛された。
音楽シーンにおいてヴィジュアル系の占める範囲はまだまだ狭いのかもしれないが、その輪を広げ、再びカリスマと呼ばれるようなバンドの誕生を待っていたい。