目的は不動産業界で常に新しい選択肢を提示し、
新しい顧客層を広げること
ソニー不動産のキーマン。売却・購入コンサルティング事業担当執行役員・風戸裕樹さん(左)と情報技術担当執行役員・角田智弘さん(右)
具体的にどういうことでしょうか?
不動産業界は、消費者に公開されていない多くの情報を不動産会社が抱えているという、情報の非対称性や透明性に課題があるといわれています。
「ソニー不動産の売却エージェントは、売主様とのコンサルティングや売却戦略を練ることに時間をかけられる仕組みになっており、売主様と一緒にどういった売り方をするか考えることができるので、納得感を持っていただけます」と、風戸裕樹さん(売却・購入コンサルティング事業担当執行役員)。実際に、仲介手数料が割引になる可能性よりも、納得できる売却活動が期待できるエージェント制度にメリットを感じて問い合わせをしてくる人が多いといいます。
Amazon.co.jp上のリフォームストアで提供中の、トイレ・キッチン・バスルームなどのリフォームのパッケージ商品についても、「一般的なリフォームでは、リフォーム業者に見積もりを依頼して、自宅を見てもらってから見積額を提示してもらうまでは、いくらかかるか分からないというのが現状ですが、パッケージ商品の場合、材料費・工事費込みのリフォーム費用が明確なので、安心して気軽にご購入いただけます。これはリフォームでも新しい選択肢を提供することが狙いです」と風戸さん。
Yahoo! JAPANとの提携でも「住まいを売ろうと思ったら、不動産会社に依頼するのが一般的です。でも、オンライン上で、売り手自身が売り出せるという新しい選択肢があったらどうでしょう。現在、インターネット上でも、ある程度の相場を把握することが可能になっています。我々は、ユーザーに出来るだけ多くの判断材料となる情報をインターネット上で提供することで、 それならば自分で売ってみようという新しいユーザーが増えて、中古住宅流通市場のパイが広がり、ひいては市場全体の活性化につながると考えています」と角田さん。
Yahoo! JAPANと提携する新しいプラットフォームについては、現在詳細を詰めているということで、詳しい情報はまだ公開されていませんが、「ユーザーと不動産会社の情報の非対称性をなくし、不動産取引をもっと分かりやすいものにすることで、 ユーザーのリテラシーが向上し、ユーザー自らが意思決定をしやすくなるプラットフォームを目指したい」(角田さん)ということです。
ソニー不動産では、リフォームパッケージ商品だけでなく、リノベーション事業も展開しています。こちらでも、ユーザーニーズに応じて、一級建築士や一級施工管理技士が一貫して顧客の相談に乗ったり、ソニーのクリエイティブディレクターがデザイン提案したりという新しい選択肢を提供しています。
新しい選択肢を増やすほど、住宅の売買やリフォーム・リノベーションのハードルが下がり、潜在的な需要が顕在化し、市場が活性化するという好循環を形成するのが、ソニー不動産の狙いのようです。
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キーマンお二人のお話を伺って、筆者自身が勘違いをしていたことに気づきました。ソニー不動産は独自のビジネスモデルを打ち出すことで、不動産業界側を変えようと考えているのかと思いましたが、消費者へ新しい選択肢を増やしたり、消費者のリテラシーを高め、消費者の意識を変えることで、業界に影響を与えようと考えているのだと思い至りました。
マイホームの売買で選択肢が広がってくれば、それぞれの選択肢の違いをよく理解し、自分たちに合うものを選ぶということがとても大切になってきます。