何にも染まらないセンス
出演作品がグンと増えている綾野剛。特定の色に染まらないしなやかさと軽やかさ、誰にもマネできない抜け感、ふと見せる素顔のような演技が魅力です。力みがないから、人間の余白、揺れ動く心、特別でない等身大の人物を演じることができるのではないでしょうか。人間らしさがフワリと見えるから見ているこちらも心地よさがあります。漆黒にも純白にも染まる演技は、無色の自分を持っている綾野剛のセンスだと思います。
イケメンという枠をスリルと抜け出るセンス
女性にとっても男性にとっても魅力ある俳優が綾野剛。イケメン俳優という肩書きはあるものの、その枠をスルリと自由に抜け出ているところが、性別を越えた支持につながっているように思います。カッコつけないカッコよさと呼ぶべきかもしれません。『勇者ヨシヒコと魔王の城』では上半身が人間、下半身が馬というケンタウロス男を、『闇金ウシジマくん』では、主人公の丑嶋馨(山田孝之)の駄菓子好きな情報屋を演じています。イケメン度を必要としない役もなんなく演じてしまうイケメン、心憎いです。
引き算のセンス
『ウロボロス~その愛こそ正義。』の謎めいた男を演じ楽しませてくれました。だらしない人と几帳面な人、わかりやすい人とわかりにくい人、正反対の人間をアッサリ演じ分けてしまいます。ファッショナブルで現代的な雰囲気なのに時代劇にも違和感がありません。『八重の桜』で演じた松平容保の人間味あふれる演技は驚きました。『クレオパトラな女たち』で主人公の峯太郎(佐藤隆太)を思う同級生の黒崎裕のやわらかい印象と切ない優しさが魅力的でした。
演じるために何かを加えるのではなく、演じるために自分を無色にする引き算の哲学を彼に感じます。引き出しが多いのに引き算で演じる綾野剛は、役をまとっても軽やかなままでいらえる。そういう意味でもセンスを感じます。