酒を飲んでいないの「アルコール濃度」が上昇するミステリー
「血中アルコール濃度」はなぜ上昇していたのでしょう? アルコールのでき方からさかのぼって、この謎を解き明かしていきたいと思います。2009年、テキサス在住の61歳の男性がめまいがして気持ちが悪いと救急に運ばれた。病院で呼気検査を行ったところ、男性はその日酒を全く飲んでいなかったにも関わらず、男性の「血中アルコール濃度」は法定基準の5倍を超えていた。
アルコールは酵母の糞?
シャンパンの“泡”は酵母の副産物です
酵母菌は「糖」を食べて、排出物として「アルコール」と「ガス(二酸化炭素)」を作り出します。例えは悪いですが、「アルコール」は酵母の糞、「ガス」は酵母のゲップともいえるでしょう。この「アルコール」をさらに蒸留してできるのが焼酎やウイスキーです。できた「ガス」はシャンパンなどの“泡“として利用されます。
ちなみに、酵母(イースト)はパン作りにも用いられます。パンを作るときに糖分を入れるのは酵母のエサとして必要だからです。酵母の発酵によりパンが膨らみます。パンの発酵の際にできるアルコールは、蒸発してしまうので通常酔うことはありません。
「血中アルコール濃度」が上昇した理由
酒を飲んでいないのに血中アルコール濃度が上昇した男性の件を考えてみましょう。飲んでいないのに血中アルコール濃度が上昇したとすると、体内でアルコールが生成された可能性があります。ヒトが食べた米やパンなどに含まれるデンプンは体内のアミラーゼという消化酵素で糖化されますし、果物などは糖分そのものですので、体内に酵母菌が存在すればアルコール発酵をすることは可能です。医師が検査した結果、体内に“ビール酵母”がいることがあきらかになりました。食事で取り入れた糖分がこのビール酵母によりアルコール発酵され、体内でビールが生成されていたのです。この男性は以前、自宅でビールを醸造していたことがあり、何らかの経緯でビール酵母に感染していたようです。
顔が赤いあなたは「自家醸造症候群」かも
もしかしたら……
アルコールを飲んでいないのに、食事をとると顔が赤くなったり、ガスが多く出る人は「酩酊症」かもしれません。なお、飲酒運転の際にこの病名を告げても通用しませんし、虚偽の申告をすると罪が重くなる可能性があるので悪用はしないようにしてください。