ユナク(超新星)84年ソウル出身、愛知大学卒。「超新星」を結成、07年に韓国、09年に日本でデビュー。11年に『キム・ジョンウク探し』でミュージカル・デビューし、14~15年に『ON AIR~夜間飛行』にも出演。(C)Marino Matsushima
オペラ『ラ・ボエーム』のストーリーを20世紀末のNYイースト・ヴィレッジに移し、エイズという病魔に怯えながらも夢を追い、愛に生きる若者たちの姿を圧倒的な音楽で描いた『RENT』。“No day but today(今しかない今を生きる)”という切実なメッセージは、作者ジョナサン・ラーソンの、プレビュー公演前日の35歳という若さでの急逝という悲劇も重なり、96年のオフ・ブロードウェイ初演以降、世界各地の人々の胸を打ってきました。
日本でも98年に初演、08年からは東宝による公演が始まり、今回はその4演目。12年の前回から、演出にはオリジナル演出家であるマイケル・グライフによる新演出版が採用されています。今回は『RENT』に出演経験もあり、グライフの演出意図も熟知しているアンディ・セニョールJr.が“リステージ”として稽古をリード。レント(家賃)を滞納するほどの貧乏暮らしながら、夢を追って生きる映像作家のマークとロックミュージシャンのロジャー、そして彼らを巡る人々のドラマが、丁寧に形作られています。稽古前、ひとりふたりとキャストが到着し、和やかな空気が漂う稽古場の一角で、今回初めてロジャー役を演じるユナクさん、そしてアンディさんにお話を伺いました。
ロジャー役ユナクが語る
「人生を変えるミュージカル」『RENT』の手応え
製作発表で「Seasons of Love」を歌うユナクさんらキャスト(C)Marino Matsushima
「はい、以前韓国で『アイーダ』を観て、音楽もいいし、ラダメスという将軍の役がかっこよくて、ミュージカルっていいなあと思ったんです。演技も踊りも歌もできて、ライブ感があるジャンルなんだなと。そのあと『カルメン』『サ・ビ・タ』を観て、『キム・ジョンウク探し(邦題・あなたの初恋探します)』からは“やる!”と思いながら観ていました。そのためボイス・トレーニングも体づくりもやっていましたが気づいたらアイドルとしてデビュー(笑)。でもミュージカルへの思いはどうしても消えず、ついに11年、『キム~』でミュージカル・デビュー出来ました」
――そんなユナクさんにとって、『RENT』はどんな作品でしょうか?
「ずいぶん以前、友人がロジャー役で出ていたので韓国で観ました。韓国ではその4,5年前からミュージカルが流行っていましたが、『RENT』は特にスペシャルな作品というイメージがありましたね。韓国の芸能界では、『RENT』できちんと演じられればどんなミュージカルも出来る、という噂もあったほどです。稽古を重ねている今は、K-POPデビュー前の練習生時代を思い出します。9月9日が僕の出演する初日(注・公演の初日は9月8日)なんですが、デビューの日を目指して緊張感を持ちながら頑張っていた頃の自分が重なるんです。それくらい、初めての経験をさせてくれる作品ですね」
――アンディさんによる稽古、いかがですか?
「音楽ではアメリカ人プロデューサーとの仕事を経験したことがありますが、舞台の仕事でアメリカ人の演出家は初めて。とても新鮮ですね。作品とは直接関係ない稽古を通して、役に集中するためのテクニックを教えてくれるんですよ。コミュニケーションゲームみたいなのもあるし、ボールを投げながら悪口を言ったり。例えば怒りの表現が必要であればそれを感じるため、いろんな練習をさせてくれます。
アメリカ人のマインドを持ったアンディの意図を自分が100パーセント表現できているかどうか、時々不安になりますが、彼が指を立ててくれたらOKだし、肩をすくめていたらまだ足りないんだなということでもう一回説明を聞いて、食い下がるようにしています」
*『RENT』トーク、次頁にまだまだ続きます!