“腸”にも味覚受容体が存在する!

味覚受容体は“腸”にも存在することが知られています。ブドウ糖を口から摂取すると、同量のブドウ糖を血液中に注入したときに比べ、急激にインスリンが放出されることがわかっていましたが、原因は長年不明でした。

2007年、小腸の内面を覆う細胞にも味覚受容体があることが明らかになり、腸の中にブドウ糖が流れ込むと腸の「甘味センサー」に検出されて、インスリンが血中にどっと流れ込むというという仕組みがわかったのです。

ちなみにこの“腸”の味覚受容体、“舌”と同様に人工甘味料にだまされてしまいます。人工甘味料を食べてもインスリンが大量に放出されてしまうのです。

「味覚地図」は間違っていた!?

アイスを食べている女性

甘味は舌の先端で感じると考えられていました

少し前までは、1901年に発表された論文をもとに、甘味は舌の先端の部分、苦味は舌の奥など、甘味・苦味・酸味・塩味・うま味はそれぞれの区画に分かれて感じているという「味覚地図」が信じられていました。

しかし、現在では舌についている味覚受容器の「味蕾(みらい)」の中にある味覚細胞は、5つの基本的な味を感知するすべての受容体を持ち、舌の全領域でそれぞれの味覚を感じとることができることがわかっています。

風邪をひいたときに食べ物がおいしくない理由

風邪をひいて鼻が詰まったとき何を食べてもおいしくないと感じたことはありませんか? それは気のせいではありません。

これは鼻が詰まったため、鼻の中にある嗅覚受容体の作用が鈍ったことが考えられます。嗅覚受容体が鈍ると「風味」を感じることができなくなります。果物や松茸、ワインなど食べ物は風味がなければ美味しさは半減します。

また、鼻の中にも味覚受容体があります。鼻の内側を覆う細胞には“苦い”物質を感じる細胞が含まれています。例えば、空気中の“毒物”を感知すると反射的に空気を肺の中に入れることを中止します。もしも“毒物”が気管に入ったら、気管の「苦味探知機」が反応して“絨毛”という細い毛のような突起で気道内の清掃を開始してくれるのです。

風味と視覚を利用した「かき氷のシロップ」

かき氷

かき氷のシロップの成分はどれもほぼ同じ

かき氷のシロップといえば、イチゴ・メロン・レモンなどありますが、着色料と香料以外はすべて同じ原料で作られています。“香料(風味)”と“見た目(視覚)”で脳が勘違いしてしまうため内容が同じでも違う味に感じてしまうのです。

また赤ワインと白ワイン、味は違うように思えますが、白ワインに食紅を一滴たらすだけで赤ワインと勘違いします。同様に、目隠しをして赤ワインと白ワインを飲んでも飲み分けるのは困難です。知らないうちに「視覚」に騙されているのです。

味覚には「音」や「経験」も影響

スナック菓子の“パリパリ”とした「音」も味覚に関係します。音を感じるだけで歯触りの“パリパリ”感が増しておいしいと脳が勘違いします。逆にそれを利用して食品メーカーなどでは音に特化した商品開発も行われています。

また小さいときの経験とともに「あの食事がおいしかった」という経験もあるのではないでしょうか? “ほろ苦い経験”や“甘い経験”は味覚にも影響を及ぼしています。

“匂い”で過去の記憶がよみがえる「プルースト効果」

ワインをテーマにしている漫画『神の雫』では主人公がワインの香りを嗅いだだけで忘れていた過去の記憶がよみがえるシーンがよくでてきます。これは「プルースト効果」と呼ばれるものです。

“匂い”には忘れていた過去の記憶を思い出す力があります。人間の脳は理性や知性をつかさどる「大脳新皮質」と原始的な脳の「大脳辺縁系」と大きく2つに分かれています。他の感覚とは異なり、“匂い”の感覚である「嗅覚」は人間の本能的な脳である「大脳辺縁系」にダイレクトに伝わるため、知性によって制御されない、思いがけない過去の記憶を目覚めさせてしまうことがあるのです。

「子供の好み」は「親の好み」

食事

一回一回の食事を大事にしたいですね

経験的に感じている人もいるかもしれませんが、「親の好み」が将来の「子供の好み」を決定するとされています。小さい時に与えられた食べ物が好みに影響するのです。これを利用して食品メーカーでは、いかに小さい時期に自社の製品を子供に食べさせてイメージを植えつけさせるかということに躍起になっています。

味覚は「口」だけでなく、「目・鼻・耳」「腸」「子ども時代の経験」「場所」「食器」「ともに食事をする人」などによって形成されます。人生で食事をする回数は数えてみると実はそう多くはありません。"一期一会"ならぬ"一期一食"を楽しみましょう。



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