30代の3世帯に1世帯は「貯蓄ゼロ」の時代に
まずは、少々ショッキングな数字から紹介しましょう。2016年11月、金融広報中央委員会が発表した同年の「家計の金融動向に関する世論調査」によると、30代の2人以上の世帯で「貯蓄がない(※)」と答えた世帯の割合は実に31.0%に達しました(表参照)。
▲30代、40代の「貯蓄ゼロ」世帯はともに30%超ですが、20代の45%超えも深刻です。
この数字、注目すべきポイントは2つあります。ひとつは、その数値の高さです。31.0%は、実に3世帯のうちほぼ1世帯が「貯蓄ゼロ」ということを意味します。しかも、この数値、2010年には24.3%でしたから、この6年で7%近くアップしたことになります。
もうひとつは「2人以上の世帯」が調査対象ということ。年齢層から考えて、その多くの家族構成が「夫婦」もしくは「夫婦+小さな子ども」と想定できます。つまり、30代は教育資金や住宅資金など、まとまったお金の必要なライフイベントが目白押しなのにもかかわらず、貯蓄がないということです。
中にはこの結果を見て、ホッとひと安心している人もいるかもしれません。貯蓄がないのは自分だけではなかったと……。しかし、そこで安心していては、家族のライフプランそのものが変更を余儀なくされてしまいます。そこで、貯蓄の必要性と具体的な必要額を改めて考えてみましょう。
30代は人生に必要な貯蓄をスタートさせる時期
さて、ここで不思議に思う人もいるかもしれません。ここ数年、景気は回復トレンド。毎年、多くの企業の過去最高益が報じられもしました。にもかかわらず、なぜ貯蓄できない世帯が増えているのでしょうか。
その大きな要因となっているのが、物価上昇に収入が追いついていないという実態です。2014年4月に消費税が8%にアップし、それに合わせて、さまざまな商品やサービスの価格が上昇。しかも、物価高となった裏で、社会保障費も上がりました。その後、収入がアップした人も増えてはきましたが、まだすべての企業、すべての業種というわけではありません。
それでも、とくに30代は頑張って貯蓄していく必要があります。もちろん、一口に30代と言っても、既婚と未婚、30代の前半と後半で状況は違いますが、一般には、結婚資金やクルマ、住宅の購入のための自己資金を貯め始める時期です。子どもが生まれれば教育費が発生しますし、また、キャリアアップのため自己投資をするのもこの世代が中心と言えるでしょう。したがって、この時期に貯蓄がないのは、相当に深刻ということになるわけです。
30代前半で300万円、終盤なら600万円
では、30代はどのくらい貯蓄が必要なのでしょうか。ケースによってその額は異なりますが、30代前半であれば300万円がひとつの目安となるでしょう。20代のころは収入も低く、年間30万円程度が無理のない貯蓄額。10年で300万円ですから、30代前半には十分貯められることになります。さらに、30代も終盤で、結婚や住宅購入などの大きなイベントがまだの場合は少なくとも倍の600万円は欲しいところです。
ただし、貯蓄ができなくても、状況によっては焦る必要はありません。たとえば、共働きだったが、妻が出産、子育てでしばらく収入が低下する場合。再度妻が働くことで、後から十分挽回できます。
一方、そういう状況に関係なく、貯められない体質になっているケースもあります。無駄遣い、支出癖がしみついてしまっている。しかも、本人はそれに気づいていない。そうなると、なかなか貯めることはできません。
もしも貯められないと悩んでいるなら、自分が一体どちらなのかを見極めることがまずは大切になってくるでしょう。
(※)土地、建物、貴金属等の実物資産、および日常的に生活のために出し入れ・引き落としに備えている現金や預金は含まない。
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