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アメリカの医師はどのようにキャリアを決めるのか?

日本もアメリカも、医師のキャリアは医学部卒業後に決めなければなりません。日本では好きな専門科(内科・外科・精神科・皮膚科など)を選べるのですが、アメリカではそう簡単ではなく、人気の専門科をめぐる競争が卒業前に待ち受けています。また、日本よりも医師のキャリアはより多様です。人気のキャリアであり続ける「医師」という職業は、それぞれの国でどのように捉えられているのでしょうか?

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

アメリカと日本で明確に違う「専門医」の考え方

日本では各専門科の人数ははっきり決まっておらず、また専門医(アメリカではboardと呼びます)と専門医でない医師の境界はアメリカに比べるとあいまいです。例えば、皮膚科専門医がいなくても皮膚科クリニックを開業できるように、専門医以外でも開業してその専門科の病気のある患者さんを診察して処方を出すことができるのです。

こういったことは、アメリカでは通常無理です。また、内科・小児科・皮膚科のようにいくつかの科を同時に広告に載せている医師も日本ではよく見かけますが、アメリカでは専門医をもっている科以外の診療は行いません。よく言えば専門性がしっかりしている、悪く言えば柔軟性がない、とも言えます。

コーネル大学

マンハッタンにある名門、コーネル大学医学部


アメリカでは各専門医の人数を適正な数に保つため、毎年各科のトレーニングに入れる人数を制限しています(2015年は内科では約7000人、外科では約1300人、皮膚科では約400人)。こうすることで、ある科の医師が需要に対して極端に少ない、もしくは多いという事態が生じるのを防いでいます。

トレーニングにかかる年数は専門科により異なりますが、3−7年程度で、その間は薄給(平均年収55,000ドル、日本円で600万円程度)で指導医のもとトレーニング(residencyと呼びます)を積みます。その間は自分一人で患者さんを診ることはできず、指導医の許可が必要になります。数年のトレーニングを終え、晴れて指導医として患者さんを一人で診ることができるようになります。指導医になると患者さんの診断・治療に責任が生じますので、その分給与も一気に上がり、3倍程度になります。

日本では初期研修を2年終えると専門医はないものの、一人で患者さんを診て、指導医の指示なしに処方を出すことができます。また、専門医がなくても通常の医師として認められますし、開業もできます。逆に専門医は研修医のあとに数年で取得できますが、取得しても大きな変化はなく、転職の際に多少有利になる程度、というのが日本では通常です。

次ページから、アメリカと日本の医師のキャリアの決め方を見ていきます。

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