コンシェルジュという言葉がどれくらい認知されているのか分かりませんが、それを聞いて私がすぐに思い浮かべるのはホテルのコンシェルジュです。宿泊客のどんな要望でも的確に対応してくれる、すごい人といったイメージでしょうか。
そのためには高度な接客技術や知識だけにとどまらず、相手の気持ちを読み取ったり、きめ細かな心配りをしたりといった能力も欠かせません。
コンシェルジュを名乗るサービスが多くなってきた
ヨーロッパではホテルやレストランなどの職に就く人の社会的地位が相対的に高いという話を聞いたこともありますが、そのなかでもコンシェルジュといえば、なかなか権威のあるものなのでしょう。
最近ではホテルにかぎらず、観光施設や商業施設あるいは鉄道駅などで「コンシェルジュ・サービス」のように使われることも増えてきたほか、高級マンションなどにおける居住者向けフロントサービスの担当者をコンシェルジュと呼ぶ例も現れているようです。
その一方で、2008年頃からは「不動産コンシェルジュ」を自ら名乗る仲介業者が急速に増えてきた印象もあり、最近では「コンシェルジュ」そのものを会社名に付けている例もいくつか見受けられます。
そのこと自体は何ら悪いことでもなく、顧客に対して行き届いたきめ細かなサービスを実践してもらえるのなら、むしろ歓迎すべきことでしょう。
しかし、そこで働く社員の一人ひとりにどのくらいコンシェルジュとしての意識や自覚が浸透しているのか……。
少し前のことになりますが、「不動産コンシェルジュをめざして ○○(某大手仲介会社名)」という幟 (のぼり) が立てられた中古一戸建て住宅の売り出し現場をみたとき、「それだったら、せめて家のまわり(玄関前や車庫部分など)の掃除くらいはちゃんとやってあげようよ」と感じた次第です。
ゴミが散らかったままの売り出し現場に立つ不動産営業担当者を、「コンシェルジュ」などと呼びたくはありません。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2008年10月公開の「不動産百考 vol.24」をもとに再構成したものです)