不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

リフォームが査定価格に有利?建物評価の改訂・2015年(2ページ目)

「リフォームしたのに、売却の査定額でそれが評価されなかった」、そんな不満をお聞きしたことがあります。「適切にメンテナンスしたことが、妥当に評価されるようにしよう」という取り組みが動き出しています。その第一弾として、一戸建ての建物価格の評価方法が見直されます。具体的に見てきましょう。

山本 久美子

執筆者:山本 久美子

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売買時の価格決定に影響力のある「価格査定マニュアル」

中古住宅の売り出し価格を売主が決める際に、通常は不動産会社(仲介会社)に査定を依頼して、査定額を参考にしていくらで売り出すか検討します。この査定額をどうやって算出するかは、不動産会社によって多少の違いはありますが、査定額を提示するときには、その根拠も明示することになっています。

価格の根拠を合理的に示す手法として作成されたのが、不動産流通推進センター(前:不動産流通近代化センター)の「価格査定マニュアル」です。不動産会社は、このマニュアルまたはこれに準じたマニュアルを利用するなどして、査定額の算出根拠としていると考えられます。

したがって、建物の評価基準を見直しについては、不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」や日本不動産鑑定士協会連合会の「既存戸建住宅建物積算価格査定システム」などの改訂が、大きなきかっけになるというわけです。

不動産流通近代化センターが「戸建住宅価格査定マニュアル」を
2015年7月末に改訂

不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」には、戸建住宅用、マンション用、住宅地用の3種類があります。このうち、「戸建住宅用」のマニュアルが2015年7月末に改訂されます。
先に紹介した「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」に沿って、どういった改訂がなされるのか、見ていきましょう。

(1)建物を基礎・躯体と外部仕上げ(屋根、外壁、外部建具)、内部仕上げ(内部建具、内装)、設備(台所、浴室・洗面・トイレ、給排水・給湯設備、照明器具・電気設備)の合計10に細かく分類
(2)建物の基礎・躯体を最上位のものから標準的なものまで5段階に分け、基礎・躯体の耐用年数を次のように設定
  • 耐用年数100年:長期優良住宅相当
  • 耐用年数75年:住宅性能表示制度の劣化対策等級3相当
  • 耐用年数50年:住宅性能表示制度の劣化対策等級2相当
  • 耐用年数40年:昭和60年以降に旧住宅金融公庫の融資を受けているもの
  • 耐用年数30年:上記以外
基礎・躯体については、インスペクションや瑕疵(かし)保険に加入するための検査を受けている場合は、劣化状態の有無が評価に反映され、これらの検査を受けていない場合は、点検や補修など日常的な維持管理の有無が評価に反映される
(3)外部仕上げ、内部仕上げ、設備については、使用されている部材の質やグレードで再調達価格が算出されるが、外部仕上げや内部仕上げでリフォームが行われて いれば、その時期や規模が評価に反映される。設備については、新しいものと交換されていれば、評価に反映される。

リフォームが価格に反映されるかどうかは、今後に注目

これまでは、基礎・躯体の耐用年数も短く、内外装・設備のリフォームもあまり価格に反映されていませんでした。ですから、不動産会社が新しい価格査定マニュアルで査定額を算出すると、そこで得られる査定額はこれまでより高くなります。査定額が高く出ることはうれしいことですが、その額で売れるということとは別物です。

インスペクションなどの検査結果やリフォームの実施情報が十分に提供されるなど、購入者に納得感・安心感を得られる状況になれば、高く出る査定額で買ってもらうことができるかもしれませんが、それには売主である所有者の意識の高さはもちろん、買主に住宅の状態を説明する仲介する不動産会社の技量も求められることになるでしょう。

また、新しい査定マニュアルなどが広く利用されること、住宅ローンを借りるときに金融機関が査定額に見合う担保価値を設定すること、なども課題です。それには、中古住宅市場が成熟し、使用価値に応じた売買が行われるようにならなければなりません。

日本不動産鑑定士協会連合会でも、7月末に「JAREA-HAS(既存戸建住宅建物積算価格査定システム)」の改修などが予定されています。さらに、不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」のマンション用及び住宅地用の改訂作業も2018年度には行われる予定です。

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今できることは、所有する住宅のリフォームをする場合は、リフォームの実施状況や効果を第三者に開示できるように、適切に行い記録を保存すること。中古住宅市場が成熟したときに、有効になるからです。
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