疲労回復法/お風呂・温泉を使った疲労回復法

医師も悩む「風邪をひいたときのお風呂」問題

風邪をひいたかな、という時、お風呂に入ってよいかどうか悩むところです。とても身近な医学的問題ですが、これについての研究は決して多くありません。医師でも悩むこの問題、現状で分かっていることとは?

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

風邪をひいている時、お風呂に入ってよいのか、止めておくのがよいのか悩むところ。ご自身の風邪の時もそうですが、子どもはよく風邪をひきますので、親としてはその都度悩むことも多いものです。それもそのはず。実は、私たち医師が悩んでいる問題でもあります。なぜなら、この疑問に答えてくれる医学研究はとても少ないからです。

現場の医師たちはどのように判断しているのか?

風邪の時のお風呂

風邪の時のお風呂は、医師も悩むところ

現場の医師たちも判断に迷っているという一面を表した研究報告があります。

2000年に発表された小児科医に対する調査の論文ですが、88%の小児科医が「風邪の時の入浴を許可する」と回答したのに対して、12%の小児科医は「入浴を許可しない」と答えました。

また、許可すると回答した小児科医の中でも、無条件に許可する医師もいれば、発熱が無いこと、重大な症状がないこと、風邪にかかってすぐではないこと、などを条件に入浴を許可する医師までさまざまでした。これらのことから垣間見ると、現場の医師たちも判断に悩んでいることがうかがえます。

風邪の治りは悪くならないという研究も

一方、風邪の時にお風呂に入ったグループとお風呂を控えたグループで、風邪の治りを比べた研究があります。おそらく、これが唯一の研究と思われますが、風邪で受診した子どもへお風呂に入るよう指導した例とお風呂を止めるように指導した例で比較して、どちらも風邪の治りが変わらなかったというものです。ひとつの研究だけで結論が出せるものではありませんが、とても参考になる研究と言えそうです。

「お風呂を控えるべき」と言われていた理由

確かに昔は「風邪の時はお風呂を控える」ということが普通でした。前述の調査でも高齢の医師ほど風邪の時の入浴に否定的であったことがわかっています。これには、一般家庭の住宅事情の歴史的な変化が関係しているものと思われます。

一般家庭にお風呂が普及してきたのは1960年代です。それまでは家庭にお風呂は無く銭湯が普通でした。入浴後は当然外を歩いて帰宅することになります。夏ならまだしも、冬には湯冷めすることもあったでしょう。湯冷めは風邪を悪化させる原因となります。このようなことから、風邪の時はお風呂を控えるという考え方になったのが一般的になった、と考えられています。

現在は家庭にお風呂があるのが当たり前となり、空調や断熱など住宅事情も以前と比べて良くなっています。お風呂に入っても湯冷めをする心配がずいぶん減っているのです。

結局、風邪の時はお風呂に入っていいの?

このような現状を踏まえると、風邪の時のお風呂は原則、入って構わないと考えています。もちろん、これは体温が37℃程度の微熱で、かつ体調がある程度良い時に限りますが、疲れない程度に40℃程度のお風呂にさっと入って、湯冷めしないようにゆっくり休むのがコツです。気分的にもさっぱりしますし、お風呂の湯気も、のどや鼻の不快な症状の緩和に役立ちます。

ただし、風邪のような症状でも他の病気であることもあるので、受診した場合は医師に入浴の許可の確認を取ると安心でしょう。


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