空間の一番奥に「最も明るい場所」をつくる
人気カフェに学ぶ照明計画の次のポイントは「光量の差を利用すること」です。店内の一番奥まった場所には、小さなテーブル席があります。ここは、他のテーブル席とは少し違ったスペシャルな空間といったところでしょうか。
他のテーブル席の照明は40Wの電球ですが、ここだけは60Wの電球を取り付けています。三方を壁に囲まれ、こもる感じが落ち着きます
このスペースは三方を壁に囲まれていることから、座るとまるで小さな洞窟のような場所にこもる感覚を味わえます。それがかえって落ち着きを生み、思わず長居したくなるような場所となっています。
注目すべきは、空間の明るさです。他のテーブル席と同様に、シェードのない全方向拡散型のあかりが取り付けられているのですが、他のテーブル席は40Wの電球なのに対し、この席だけは60Wの電球になっているのです。
住宅でも店舗でも同じですが、入り口だけを明るくして、奥まった部分を暗くするのではなく、一番奥のほうに明るい照明を配置すると、実際のスペース以上の奥行き感が生まれます。このカフェの場合も同様です。住宅でも、部屋の中を均一な明るさにするのではなく、複数の照明器具を分散して配置することで、明るい場所と暗い場所をつくり、その陰影を愉しむのもよい方法です。
自然光が入るカウンター席はまるで書斎
また、もうひとつのポイントは、自然光を利用することです。店内に入ってすぐの右側の窓際に、カウンター席が2席あります。ここは、大きな窓から入る自然光をたっぷり感じられる「特等席」ともいえる場所です。店の外観デザインの上でも、扉と同じブルーに塗られた金属製の枠が大きなアクセントになっています。夕方になって外が暗くなってくると、この窓から店舗内の様子が見えるところもいいですね。「この窓の大きさや配置にもこだわりました」というオーナーの言葉にも納得です。
窓に面したカウンター席は自然光が入り、明るく気持ちよい空間。ここで長時間勉強している学生や仕事をしている常連のお客様もいるそうです
常連のお客様の中には、外からは見えないのでとても落ち着くと、常にここを利用する方もいるのだそうです。住宅でいえば書斎のような空間というところでしょうか。仕事や読書に集中しつつ、ちょっと休憩したいときにふっと自然光を感じて、気分転換ができるようなスペースです。実際の書斎に応用するのであれば、夜間でも手元に必要な明るさが得られるようにスタンドなどを用いるとよさそうですね。
壁やドアを利用して居心地のよい空間をつくる
このカフェの照明計画のワザはこれだけではありません。例えば、漆喰の壁の表面は滑らかではなく、あえてコテの跡を残した、ラフな仕上げです。白い壁は光を反射しますが、漆喰という自然素材は光を適度に吸収します。そのため、柔らかな光に室内が満たされます。また、壁の表面にコテによる凹凸があるため、光の反射が均一でないところもかえって、くつろぎにふさわしい味わいを演出しています。壁の仕上げを変更できない賃貸住宅のような場合は、布も光を吸収する素材なので、カーテンやタペストリーといったファブリックをインテリアに活用してみるのもよいでしょう。また、空間の奥を明るくすると、人は奥行きを感じるという話をしましたが、実はもうひとつ、その手法を採用しているのが、トイレに通じるドアのガラス窓から見えるあかりです。オーナーによれば、このガラス窓のあかりも店舗全体の照明計画の一旦を担っているため、照明は常時点灯しているのだとか。四角形に区切られたガラス部分が、白い壁の中に額縁のように見えますね。
木製の扉は家具と同じ工房に製作を依頼したオリジナル。四角いガラス部分のあかりも照明計画の一部なので常時点灯しているそうです
店舗のあかりのワザを自宅に取り入れよう
くつろげる、居心地のいい空間というのは、さまざまなワザやコツによってつくり出されているということがおわかりいただけたでしょうか。タスク照明とアンビエント照明を組み合わせることは無駄なあかりを削減し、省エネにもつながりますし、クリア電球をそのまま吊るすことで光のバウンドを利用したり、電球のきらめきそのものをインテリア要素として活用したりといったことは、住宅にも取り入れることができます。最近では、このカフェで使われている、クリア電球のようなきらめきを上手に採り入れたLED電球も普及し、価格も買い求めやすくなってきています。クリア電球による「アンビエント照明」と、シェードのある照明器具を使った「タスク照明」でカウンターの上を照らし、店内の明るさを調整しています
もし、お茶を飲んでいたり食事をしていて「居心地がいいなあ」と感じる店があったら、照明やインテリアはどうなっているのだろうかと、店内を見回してみてください。ついつい長居をしてしまう店というのは、照明やインテリアなどにくつろげる仕掛けが施されているから、なのかもしれません。新しい発見を求めて、あかりやインテリアに注目しながらお気に入りのお店を探すのも、楽しいものですね。
第15回全国小学生ポスターコンテスト作品募集
募集テーマ「楽しいあかりのあるくらしを描こう!」。
詳しくは、「あかりの日」ホームページをご覧ください。
http://www.akarinohi.jp/
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