アドバイス1 まずは保険加入の理由を整理しよう
ご夫婦とも保険未加入ということですが、商品選びの前に、まずはなぜ保険に入るのか、その理由を整理しておくといいと思います。死亡保障は夫もしくは妻に万が一のことがあった場合、遺された家族を経済的に支えるためのものです。一般的には、お子さんが学校を卒業して社会人になるまでの家族の生活費、教育費をカバーするものと考えればいいでしょう。もちろん、その全額を保険でカバーするというわけではありません。公的遺族年金や勤務先の弔慰金制度、貯蓄、遺族の収入などを考慮して、割り出す必要があります。
もうひとつ考慮すべきは、必要最小限の保障に抑えることと、保険料の割安な商品で確保するということ。Kさんの場合、教育資金やその先の老後資金も用意しなくてはなりません。保険料が家計負担となって貯蓄できないということでは、それこそ本末転倒なのです。
アドバイス2 「加入しない」という選択肢を残しておく
さて、ご主人の死亡保障額ですが、不確定な部分があり一概には言えませんが、持ち家で、奥様が働くとなれば、お子さんの教育費+予備費として2000万円前後が必要最小限と言えるのではないでしょうか。家計に余裕があれば終身保険でもいいですが、割安な定期保険や共済で確保することをおすすめします。また、奥様の死亡保障ですが、近々働かれるとのことですので、そうなればある程度家計を支えることになります。収入に応じて、500万~1000万円が妥当ではないでしょうか。
医療保障は、健康保険の高額寮費制度(※)が利用できること、入院日数が短縮化傾向にあることなどを考慮すれば、入院5000円がひとつの目安。有期払いの定期タイプで。がん家系であれば、プラスがん保険を検討してもいいでしょう。ただし、医療費は貯蓄があれば、多くの場合カバーできます。医療保障は必ずしも必要とは言えないのです。
どこに相談すれば、ということについては、ご自身でしっかり最終判断ができるならば、来店型の保険代理店を利用してもいいかと思います。ただし、代理店の提案には「加入しない」という選択肢がありません。しかし、ご自身の中にはその選択肢は残しておくべきでしょう。
アドバイス3 貯蓄を増やす意識を高めたい
ご相談にはありませんでしたが、家計について。収支データを拝見すると、収入37万円に対して支出34万7000円。現状で毎月ほぼ児童手当分しか貯蓄できていない点が気になります。Kさんの場合、教育資金づくりがまずは大きな貯蓄の目的となりますから、それに向けて、貯蓄意識を高めてください。具体的には、高校まで公立であれば、事前に用意すべき教育費=大学費用となります。ただ、大学と言っても、進路や大学の所在地(県外なら仕送り費用の発生も)によって発生する費用は異なってきますが、私立文系で大学にかかる費用(入学金、授業料など)として1人400万円、2人なら800万円がひとつの目安になるでしょう。
もちろん、奥様の収入が加われば、ほぼ全額貯蓄に回せます。3年後には住宅ローンも完済となりさらに貯蓄ペースはアップしますから、おそらく教育費は準備できるはず。とは言え、希望どおりに奥様がずっと働き続けられるかどうかはわかりません。家計を見直し、無駄を省いて貯蓄を増やす意識は常に持っておくべきだと思います。
(※)公的な健康保険の加入者が利用できる。1カ月の医療費の自己負担額が一定を超えると超過分は健康保険から出るという制度で、一般に自己負担額の上限は9万円弱(所得区分が「一般」の場合)。勤務先の健康保険組合によっては、さらに自己負担額を抑える制度がある場合もある。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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