個性派監督が描く摩訶不思議な脳内ワールド
『マルコビッチの穴』(1999年度作品)俳優ジョン・マルコビッチの脳内に入り込める穴を見つけたシュワルツ(ジョン・キューザック)は、この穴に入れるという商売を始めます。すると、多くの人が殺到! 商売繁盛! でも、マルコビッチ本人が自分の中で何かが起こっていることに気付き始めて……。
人気監督スパイク・ジョーンズ監督の長編デビュー作。脚本はチャーリー・カウフマン。奇才二人のコラボレーションが見事にピタっとはまり、現実からひとつの穴をきっかけに摩訶不思議な世界へと連れて行ってくれる不条理コメディです。
マルコビッチの脳内に入り込む穴があるオフィスがイジョーに天井の低いフロアっていうのからして異世界でワクワクさせられます。「自分じゃない人間になってみたい」という願望は誰にでもあるはず。そんな願望が実現する様を見せてくれると同時に、それによって現実が歪む様がちょっと空恐ろしくも感じます。
監督:スパイク・ジョーンズ 出演:ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス、キャサリン・キーナー
『脳内ニューヨーク』(2008年度作品)
劇作家のケイデン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、妻と娘に去られ、失意の日々を送る中、才能ある人物に贈られる天才賞を受賞。彼はその賞金で斬新な舞台をスタートさせます。それは自身の脳内で思い描いたニューヨークの街を舞台に再現して、そこで演じるということ。しかし、その舞台はなかなか上演されず……。
『マルコビッチの穴』のチャーリー・カウフマンの初監督作。カウフマン作品は自身を投影したような劇作家やアーティストが主人公の作品が多く、この映画も然り。本作では、主人公の脳内ニューヨークを舞台化するというのにまず度肝を抜かれます。そして、その舞台で様々な人が演じる人生は、もしかしたらこちらの人生の方が現実じゃないかと……。そこがカウフマンらしい、シニカルな味かも。でも監督の脳内は複雑すぎて、けっこう難儀な作品です。
監督:チャーリー・カウフマン 出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、サマンサ・モートン、ミシェル・ウィリアムズ、キャサリン・キーナー、エミリー・ワトソンほか
『脳男』(2013年度作品)
連続爆弾事件が起こり、現場で捕えられたのは鈴木一郎(生田斗真)という男。しかし、彼は感情を表に出さず、淡々としゃべるだけで本音が見えず、何を聞いても乱れない。そんな彼に興味を抱いた精神科医(松雪泰子)は、彼の過去を調べ始める……。
首藤瓜於の同名小説を映画化したサスペンスアクション。感情のない男の内面を探るということは、つまり彼の脳内では何が起こっているのか調べるわけです。ネタバレになるので多くは語れませんが、彼には感情がなく、それは彼の過去に起因します。マシーンのような人間になってしまった理由があるのですね。
でも、ほんの少しだけ情を見せる一瞬があり、それが何を意味するのか……。このシーンは実に印象深いです。
生田斗真はこの役にはちょっとルックスが甘すぎるかなと思ったのですが、意外や熱演。役のために体を絞り、まばたきもせず、かなり自分を追い込んで演じきっただけあって凄味を感じます。
監督:瀧本智行 出演:生田斗真、松雪泰子、江口洋介、二階堂ふみほか
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