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幻のロックフェス ヱビス一番音楽祭の思い出(1)

世のロックフェスティバルがただ音楽ビジネスに扇動されたお祭りと化している現代。しかしかつて大阪には骨太なコンセプトを貫き、歌謡曲ファン、和製ロックファンに愛された真のロックフェスティバルがあった。その名も『ヱビス一番音楽祭』。出演者としてヱビス一番音楽祭に関わった中将タカノリが秘めていた記憶をひもとく。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

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現代のロックフェスティバルに望みなし

夏と言えばロックフェスティバル。

炎天下の下、芋の子を洗うような人の海の中で耳をつんざくような爆音に抱かれにゆく、自虐的とも言えるこの行事

この記事の読者にも『フジロック』『サマーソニック』などの大型イベントに参加された方は多いのではないだろうか。

しかし、僕にとって現行のロックフェスティバルは興味の対象外だ。

たとえば先日開催されたフジロックのメインステージ、GREEN STAGEに出演した面子。

7月24日
FOO FIGHTERS、motor head、ONE OK ROCK、OWL CITY、THE VACCINES、ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA (feat. 泉谷しげる,仲井戸"CHABO"麗市,吉川晃司,トータス松本)

7月25日
MUSE、deadmau5、星野源、NATE RUESS、上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス、10-FEET

7月26日
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS、RIDE、椎名林檎、JOHNNY MARR、THE VACCINES、the telephones、Alexandros

なんだこりゃ?

一昔も二昔も前に才能を使い果たしたような出稼ぎの音楽芸人やそのフォロワーばかり。

興味あるアーティストは日に一組いればいいほど。

他ステージで加藤登紀子シーナ&ロケッツ岡村靖幸チャランポランタン電撃ネットワークらが出演しているとは言えどだ。

「もっと真剣に日本のロックを発信せんかい!」


『WORLD HAPPINESS』
などある程度のコンセプトを守り続けている良質なものもあるが、おおよそのロックフェスがこの体たらく。

WORLD HAPPINESSですら2010年に参加して熱中症になった苦い記憶のある僕にとって今さら興味の湧こうはずがない。

かつて大阪に存在した"真のロックフェスティバル"

しかし

僕とて昔からロックフェスを毛嫌いしていたわけではない。

大阪には2006年から2009年まで開催されていた”真のロックフェス”と言えるイベントがあった。

2006年の回には自分自身も出演し、多くの関係者に関わった。

いろいろと思い入れのあるイベントだ。

若き日の自分をふりかえるのはなんとも恥ずかしい限りだが、記憶の定かなうちに記事として記しておきたいと思う。

『ヱビス一番音楽祭』とは

そのイベントは『ヱビス一番音楽祭』
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大阪ミナミの戎橋筋商店街が主催する夏祭りイベントだった。

大勢の人がゆきかう大阪ミナミの中心地、旧精華小学校のグラウンドに野外ステージが組まれ観客数千人規模の音楽ライブやミスえびすばしコンテストがおこなわれるという刺激的な企画。

なにより凄かったがそのブッキングで、一例を挙げると2006年の出演者は

内田裕也ザ・リンド&リンダース加橋かつみ(exザ・タイガース)真木ヒデト(exオックス)岡本信(exザ・ジャガーズ)

司会は水谷ひろし(exファンキー・プリンス)

オープニングは当時、僕がボーカルをつとめていた歌謡ロックバンドViva!LasVegas
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関西のロックシーンで活躍していたガールズバンドThe Minks

若手から超大御所まで、グループサウンズファンや和製ロックファンのツボをついた超豪華面子だったのだ。

加賀テツヤの人望 内田裕也の男気

このイベントのブッキングをうけおっていたのはリンド&リンダースの加賀テツヤさんだった。
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個人的に親しくしていただき、音楽活動の面でもなにかと世話を焼いていただいた恩人だ。

その加賀さんから出演オファーがあった時のことはよく覚えている。

「今度、ミナミの精華小学校でグループサウンズのイベントやるねん。前座で申し訳ないんやけど出てくれへんかな?」

当時、いちアマチュアバンドマンだった僕にとってはまたとない大抜擢。

喜び勇んで一も二もなく引き受けた。

この話をもらった時点でおおよその出演者は決まっていたようだ。

ただ、企画が進む中で当初メインゲスト格で出演するはずだった安岡力也さんの体調が思わしくなくなり、代わりに内田裕也さんが駆けつけてくれるようになった。

けっして良い出来事ではないが、加賀さんの人望、裕也さんの男気を感じ胸が熱くなったものだ。

僕の人生を変えた『花の首飾り』

7月29日、晴天。

たしかお昼前には楽屋入りしていたと思う。

出演順のリハーサルだったので早々とすることがなくなり、手持ちぶさたになった僕は楽屋を出て会場のグラウンドにぶらっと歩き出した。

何の気なしだったのだが、そこで体験した光景がすさまじい。

誰もいない閑散としたグラウンド、僕一人の前で加橋かつみさんがタイガース時代の大ヒット曲『花の首飾り』を唄いあげているのだ。
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世代こそリアルタイムではないが、十代から思い入れがあってレコードやCDで繰り返し聴いた曲。

「花咲く娘たちは……花咲く野辺で……」


特徴的なクセのある歌声が脳髄にビビッと響いた。

そして、自分は今とんでもないステージに立とうとしていることに改めて気づかされた。

それまでなんとなく「売れたい」とは思っていたが、明確なビジョンもなく惰性で小規模なライブを繰り返すばかりだった日々。

その時が楽しければそれでいいような生活に陥っていたようにも思う。

それがどういうわけだかこの光景を体験したことで

「ここまで連れてきてもらった……もっともっと登らないと」

という気持ちに切り替わった。

現在に至るまでさほど売れもせず、さほど有名にもなっていない僕だが、少なくとも現役で音楽や表現の仕事を続けられているのはこの時の『花の首飾り』のおかげだったりするのだ。

熱狂のグループサウンズ・リバイバル開幕

5時にゲートが開かれると、会場は瞬く間に人の海になった。

イベントは6時、ジャズ喫茶『ナンバ一番』オーナーだった何武雄(カ・タケオ)さんのトークショーから始まり次がオープニングアクト。

The Minksが一番手で、僕たちの二番手だったがどちらにしても出番まではあっという間だった気がする。

先に演奏メンバー達がステージでセッティングしている間、僕は舞台袖から会場をのぞいていた。

ファンの方たちもこの大舞台を見守ってくれていたが、さらにその数十倍の見知らぬお客さん達がじっとステージを見つめている。

不安や緊張がまったくなかったとは言わない。

しかし「やったろうやないか!」という気持ちのほうがはるかに勢いよく心を染めてゆき、曲のイントロが鳴りはじめたとたん雑念は消え去ってしまった。

一曲目は今も歌い続けているロックンロールナンバー『雨にうたれて』

「街は今日も雨 お気に入りの靴もドロンコで……」

カンカン照りの日差しの下、なぜか雨の唄を歌いながらステージを駆け回る僕だった。
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(2)に続く
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