ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.27 彩吹真央、虚構の中の真実を求めて(2ページ目)

『ロコへのバラード』の自立心に富んだ女性の役から『道化の瞳』の愛情深い母親役まで、様々な役柄を魅力的に演じる彩吹真央さん。和やかなオーラが素敵な彼女ですが、最新作の『End of the Rainbow』では薬物依存に苦しんだ映画スター、ジュディ・ガーランドを演じます。彩吹さん史上最も壮絶なこの役、手ごたえはいかがでしょうか?*観劇レポートを掲載しました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

奇妙な三角関係に凝縮された
ジュディの人生の切なさ

『End of the Rainbow』

『End of the Rainbow』

――本作は不思議な三角関係のお話でもあります。彼女と、彼女をショービズにとどめておきたい、野心に溢れる若いプロデューサーのミッキー。もう一人は彼女の本質を理解し、常識的な世界に彼女を戻そうとするピアニストのアンソニーで、ジュディは二人の間で揺れ動きます。

「もしかしたら鈴木綜馬さん演じるアンソニーの腕の中に飛び込めば、彼女は本名の自分として穏やかに過ごせたかもしれないけれど、ジュディ・ガーランドはジュディ・ガーランドとしか生きられないというのを自分自身、あきらめているというか、運命として受け入れている。その揺れ動くさまがドラマですよね。彼女の運命の分かれ道を切なくなったり共感していただいたりしながら、ご覧いただけるのではと思います」

――そのもがく姿に、観る側は励まされるものがありそうですね。

「演じる上では、彼女の本当の心中について、まだわからない部分があります。それをお稽古を通してどう、最終地点に持って行くか。そうして出来上がった一人のシンプルな人物像を通して、こういう人生があったんだと思っていただけたり、観に来てよかったと思っていただけたら、47年の短い生涯ではありましたが、ジュディ・ガーランドの生きた証にもなるのではないでしょうか」

――今は歌稽古をされているそうですが、ジュディのナンバーはいかがですか?

「ジャズやミュージカル映画のナンバーなど、ジャンルがいろいろなのと、ショーのシーンで歌う部分と自分の心情を歌に載せて歌うシーンの歌いわけもあって、やっていて楽しいですね。ショーのシーンでは、彼女になりきってそのテンションで歌うんですが、稽古で“私、ここまでのテンション出せるんだ”と思った瞬間があったんですよ。新しい彩吹真央が開かれる機会にもなるかもしれません。実際何度かそういう感覚になったので、舞台に立ったらもっともっと私の知らない部分が出てくると思います。

ナンバーで言うと「Come Rain or Come Shine」や「The man that got away」。特に後者はジュディが何を思ってどう愛に向かっているのか、という本当の葛藤が集約されたナンバーで、すごく大切な曲だなと思うし、歌いこめば歌いこむほどジュディはこういうことだったのかなと自分の中で生まれてくるものがあるので、もっと歌いこみたいなと思います」

――歌う彩吹さんにジュディが降りてくるかも…。

「そうでないといけませんよね。今は歌稽古で歌だけで紡いでいるところに、これからメインのお芝居が加わりますので、お芝居が自分の体の中に入ったらまた歌い方も変わると思うし、より深くなる自信はあります」

――4人芝居ですので、濃厚な人間ドラマとしても楽しめそうです。

「鈴木綜馬さん、小西遼生さんとは以前、ご一緒したことがあります。伊礼彼方君は共演は初めてですが、過去に事務所が一緒だったのでお話したことはありますし、どんなかたかも存じ上げています。今回は小西さんと伊礼さんがミッキーをダブルキャストで演じてくださるのですが、想像できるお二人のミッキーを覆すような表現がおそらくあるでしょうし、それぞれ違うミッキーになると思いますので、とても贅沢な舞台になりそうです」

*次頁では、彩吹さんのこれまでをうかがいました。幼少時代から宝塚に憧れ、入団してからも少しもぶれることなく宝塚愛を貫いた彩吹さん。そこで得た一番大きなものとは?
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