お笑い好きの夢、打ち砕かれる
のっけから個人的な話で恐縮ですが、この先いつの日か海外を渡り歩いて、世界各地の笑いを実地体験してみたい! という密かな夢を長年抱いておりました。ところが、そんな淡い望みを打ち砕く一冊が、今年出版されたのです。その名も「世界“笑いのツボ”探し」。ピーター・マグロウ、ジョエル・ワーナーの2人が、世界を旅する中で笑いの原則を捜し求めようとする驚くべきルポルタージュです。北アメリカを基点に彼らが訪れたのは、タンザニア、スカンジナビア、パレスチナ、アマゾン、そして日本。
当ガイドが長年抱いていた疑問の一つに、国民性や文化が違う国々であっても、笑いを発生させる構造は同じなのか? というものがありました。いまだかつて誰も解いたことのない謎に、この本が結論を打ち出すことができるのか。勝手に過剰な期待をふくらませて、約400ページに渡る分厚いノンフィクションを読み始めました。
笑いとは、無害な逸脱?
結論から言うと、当ガイドの期待を一回り越えた所から、“笑いのツボ”探しの旅は始まっていました。コロラド大学のユーモア研究所所長であるピーター・マグロウは、すべての笑いは「無害な逸脱」によって生まれるという大胆な仮説を唱え、それを実証するための世界の旅が繰り広げられたのでした。ピーター、ジョエルの「笑いの探検家」2名は、笑いの本質を見出すために海外へと足を向けます。しかしそれは、国民性による笑いの違いを発見する旅というよりも、それぞれのお国事情の中で、人々はどのようにして「笑い」と向き合っているのかを確認することが目的のようでした。