日本人への「カジノ入場料1万円」は果たして正しいだろうか?

日本人への「カジノ入場料1万円」は果たして正しいだろうか?

通称「カジノ法案」(正式名:特定複合観光 施設区域整備法案)
が国会に再提出されたことに伴い、日本におけるカジノの合法化がいよいよ現実味を帯びてきている。

カジノ法案は2013年に一度提出されたが審議が進まなかった。

理由は公明党らが「ギャンブル依存症への悪影響がある」と主張し反対したことだ。その点を踏まえ、再提出となる今回は日本人への「高額な入場料」など、利用制限が想定されている。

しかし、合法化後のカジノで日本人に利用制限を課すことは、ギャンブル依存症を防ぐ効果に疑問があるばかりか、別の問題を引き起こす恐れがある。


日本人への高額な入場料は本当に効果があるのか?

現在の計画では、日本人がカジノを利用する場合、「1万円の入場料」を取る案が持ち上がっている。

これはシンガポールの手法に倣ったものだ。シンガポールでは自国民らに100シンガポールドル(約8000円)の入場料を課している(外国人は無料)。

だが、こうした方法はむしろ「依存症を増やす危険性」をはらんでいる。

私は90年代前半から20年以上にわたって海外のカジノの現場を取材しているが、その経験を踏まえて申し上げれば、高額な入場料は依存症防止に対して逆効果となる可能性がある。なぜなら、高い入場料は客をより一層ギャンブルに打ち込ませてしまうからだ。


高い入場料分を取り返そうとギャンブルに打ち込んでしまう

1つ目の理由。「高い入場料を取り返そうとする」

そもそもギャンブルでハマる大きな理由の一つは、失ったお金を取り返そうとすることだ。

失ったお金を取り返そうとするあまり、人は冷静さを失い、やらなくてもいいギャンブルをしてしまう。負けたままではやめられず、ムキになってギャンブルを続けてしまう。カジノの現場で私はそんな人たちを数多く見てきた。

入場料はギャンブルの負けではないが、客にとって、カジノに取られたお金という意味では同じである。つまり「高い入場料=カジノの負け」と考え、取り返そうとしてしまうのだ。


入場料を惜しみ、制限時間一杯ギャンブルをしようとする

2つ目の理由。「カジノから出ようという気持ちを邪魔する」

これが日本ではほとんど議題に上らない。

高い入場料はカジノに入ろうとするのを思いとどまらせる効果は確かにあるが、裏を返せば、いったん入った人に、カジノから出るのを思いとどまらせてしまう効果もあるというわけだ。

たとえば一回の滞在につき24時間という時間制限を設けた場合、高い入場料を惜しむあまり、可能な限り目一杯の時間をカジノで過ごそうと考える。24時間カジノの中に居続けることがいかに依存症の原因となるか、説明するまでもない。


入場料として取られるならゲームに賭ける

3つ目の理由。「刹那的なギャンブルに追い込んでしまう」

ギャンブルは理屈だけではなく運のよしあしも影響する。もし運が悪いと感じたら、その日は切り上げ、出直すことも可能だが、入場するだけで1万円取られるとなるとそうはいかない。次もまた1万円取られるくらいなら、今日のうちに賭けてしまおうという気持ちにさせるからだ。

あえて「極論」として、日本人のカジノへの入場を本気で規制したいなら、1万円という「一般客にも払える程度の高額」ではなく、10万や20万という、「一般客には払えないようなとてつもない入場料」でなければ実効性はないだろう。

しかしこんな額ではどんなお金持ちも来ず、海外のカジノに行くはずだ。


日本人利用制限は「違法カジノ」に利する

政府が導入する合法カジノが日本人に利用制限を課すとすれば、いちばん喜ぶのは「違法カジノ」である。

昨年、ガーナ大使館関係者が自ら違法カジノを開き、摘発されたように、東京都内だけでも数百軒の違法カジノがあると言われている。それらが栄えているのも合法カジノがないからだ。

合法でしかも国家の安全保証つきのカジノがあればみんなそちらに行くはずが、高い入場料を取られるとなれば、その効果も半減する。

イギリスでカジノを合法化したことで、ロンドンに100軒以上あった違法カジノが消えたように、カジノ合法化は違法カジノをなくす最大の決め手でもある。

苦難の末にカジノ合法化を図るのであれば、その効果を失わせるような仕組みは避けなければならない。
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