夏の星座を楽しもう
夏の宵、南の空を見上げると、まるで巨大なイチゴのショートケーキのような、大きな三角形が目に飛び込んできます。それは「夏の大三角」。頂点に輝く3つの星は、星座を探す目印となります。こと座
夏の大三角で1番明るく輝いているのは、こと座の1等星「ベガ」です。ベガは、夏の夜空の中でもひときわ明るく、「真夏のダイヤモンド」「夏の夜の女王」などの異名をとるほど。七夕の織姫星(織女星)としても知られています。こと座の「こと」は、日本のお琴ではなく、西洋の竪琴(たてごと)です。ベガの左下にある平行四辺形のように並んだ4つの星は、竪琴の弦にあたります。全天には88の星座がありますが、その中で楽器の星座はこと座だけです。
わし座
夏の大三角で2番目に明るいのが、わし座の1等星「アルタイル」です。この鷲(わし)は、星座神話によれば、最高神ゼウスの変身した姿なのだとか。確かにアルタイルを中心に、鷲が羽を広げたような星の並びをしています。アルタイルは、日本では七夕の彦星(牽牛星)です。アルタイルの両脇に1つずつ控えるようにして輝く星は、彦星が飼っている牛といわれています。七夕の物語では、天の川の両岸に離れ離れとなった織姫と彦星は、毎年7月7日にだけ会うことを許されていますが、七夕の夜にベガとアルタイルが接近して見える、ということはありません。
はくちょう座
はくちょう座も、わし座と同じくゼウスの変身した姿。ゼウスは姿を変えて夜空のあちこちに現れます
天頂近くに輝くデネブから大きな十字架のカタチに星をつないでいくと、大空を翔る白鳥の姿が浮かび上がります。この星の並びを、南半球で親しまれている南十字(みなみじゅうじ座)に対して、「北十字」ともいいます。
天頂近くに輝く「夏の大三角」から視線を地平線方向にうつしていくと、星占いでおなじみの星座がみつかります。
さそり座
アルファベットの「S」の字のような、釣り針のような星の並びが特徴的なので、星空観察ビギナーでも星座全体をとらえやすいでしょう。サソリの心臓で輝いているのは、1等星の「アンタレス」です。赤く見えるため、「大火」や「酒酔い星」などとも呼ばれています。
いて座
さそり座の東側に位置しています。いて座は暗い星が多く、全体をとらえるにはコツがいります。まずは、小さな柄杓(ひしゃく)のカタチに並んだ6つの星を探しましょう。この6つの星の並びは、北の空で輝く北斗七星に対して、「南斗六星」といいます。星座早見盤などを参考にして、南斗六星から星をたどっていくことはできるものの、そのカタチから半人半馬の姿はちょっと思い浮かびません。いて座として認識するには想像力を働かせる必要がありそうです。
それでは、ここまでにご紹介した夏の星座たちの位置関係を、次の画像で確認してみましょう。
雲のように見える淡い光の帯が、はくちょう座のデネブからベガとアルタイルの間を通り、さそり座といて座の方向へ続いています。これが天の川です。
夏は、1年のうちで天の川がもっとも明るく、幅広く輝く季節。ですが、街灯りに照らされた明るい夜空では、それが見られないのが残念です。けれど、天の川に沿うようにして位置している夏の星座には目印となる明るい星が多く、星々をたどれば市街地でも天の川の存在を感じることができます。
また、双眼鏡や望遠鏡を持っていたら、夏の星座を頼りにして天の川が流れているであろう方向にレンズを向けてみましょう。そこにはキラキラとした川面を思わせるような、たくさんの星が輝いているはずです。
天の川の観察については「天の川が見える方角は? 時間帯や観察方法」で詳しく解説しているのでご覧下さい。
夏はいつもと違う場所で星空を楽しむチャンス!
夏休みに山や海などへ行く機会があったら、日中の観光やアクティビティだけでなく、夜の星空観察も予定にいれてみてはいかがでしょう。人工の光の影響を受けない、空気の澄んだ暗い空なら、天の川が見えるかもしれません。普段とは違う場所で、ゆったりと眺める星空は格別です。
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