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「米でトランス脂肪酸が禁止」報道は、誤り

2015年6月様々なメディアで、一部「米国でトランス脂肪酸が禁止」と報道されましたが、実際の米国の最終決定の内容とは異なっていました。誤ったまま受け止めている方もいるので、解説します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

健康への影響が気になるトランス脂肪酸

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植物油に水素添加することで、トランス脂肪酸が生成されます。

トランス脂肪酸は、多く摂取すると悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが増加し、善玉のHDL(善玉コレステロール)が減少するとみられています。

ただしトランス脂肪酸の健康への影響の研究はトランス脂肪酸の摂取量が多い欧米人を対象にしたもので摂取量の少ない日本人を対象としたものではありません。同様の影響があるかはまだ明らかではないということも知っておきましょう。

過去の記事「健康に影響? トランス脂肪酸」でも、食品安全委員会のファクトシートに基づいて解説していますので、詳しく知りたい方はお読みください。

米国ではこれまでトランス脂肪酸について加工食品の栄養表示を義務づけています。トランス脂肪酸が表示義務項目となったのは、全米薬学協会/全米科学アカデミーが「トランス脂肪酸の摂取はできるだけ少なくするべき」と提言したことを受け、米国食品医薬品庁(FDA)がトランス脂肪酸の表示について検討した結果です(農林水産省)。

規制したのは「部分水素添加油脂」

そして2015年6月16日に、FDAは「部分水素添加油脂をGRAS(一般的に安全と認められる)の対象から除外する規制を決定(2018年6月18日から規制を開始)」を公表しました。

しかし日本では、「米国ではトランス脂肪酸の食品への添加が禁止」というような報道がみられ、またインターネットやSNSなどでもこの報道についてのコメントがみられました。実際私の周りにも「米国ではトランス脂肪酸が禁止になったのに、日本ではなぜまだ禁止にしないのか」という話題をしている人もいました。

食品安全委員会や農林水産省のサイトでも、次のように告知しています。

「GRAS対象から除外されたのは、トランス脂肪酸を含む”部分水素添加油脂”です。加工食品の製造工程で、トランス脂肪酸自体を食品に添加しているわけではありません。」

「部分水素添加油脂」とは、液体の植物油に水素を添加してつくる半固体または固体の油脂で、マーガリンやショートニング等の原料のこと。規制の対象となるのはあくまでも「部分水素添加油脂」であり、トランス脂肪酸ではありません。

トランス脂肪酸は、天然由来の肉や乳製品等にも微量に含まれていますし、植物油の精製脱臭工程でもわずかに生成されます。今回の決定は、人工的に作られる「部分水素添加油脂」の使用が規制されるのであって、天然由来トランス脂肪酸だけを含む油脂、そして飼料はこの規制の対象外です。

しかし「トランス脂肪酸が禁止」と受けとめられてしまうと、天然由来のものも規制されるという異なる内容になってしまいます。

今回の決定では、今後3年間の猶予期間が設けられています。また「食品事業者は、部分水素添加油脂を食品に特定の方法で使用したい場合、その使用方法において、合理的な根拠をもって無害であることが保証できるデータとともに、食品添加物としての使用をFDAに申請し認可を受ける必要がある」ということでした

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