70年近くの歴史を誇るメイドインジャパンの傘
高級傘と言えば、インポートで高級なイメージのあるイギリス製のフォックスやブリック、アメリカ製のTotesなどのブランドを思い浮かべる人がいる男性もいると思います。今回、僕がおすすめするのは、日本の前原光榮商店さんの雨傘。昭和23年の創業で、ほぼ70年の歴史を誇る老舗の傘屋さんです。皇室御用達の傘にもなっている逸品の傘なのです。前原光榮商店の傘づくりへの意気込み
前原光榮商店の傘づくりのこだわりをご紹介します。まず、傘に使われる生地は、甲斐織物の産地であった山梨県の富士山麓にある伝統的な機(はた)により手作業でゆっくりと丹念に織られます。そして、傘の骨は、角材を少しずつステッキのような形状に削り熱を加えて少しずつ真っ直ぐに仕上られ、その後、磨き上げた中棒に「はじき」を手作業で埋め込み、骨を組んでいきます。そして、織りあがった生地と組み終えた骨は、この道50年以上の「加工職人」に引き継がれ、加工されます。生地は傘に成るべく裁断・縫製し、骨組みに張っていきます。前原光榮商店ではほとんどの加工は2枚重ねで裁断し裁断時の精度を上げています。また、加工職人は、自ら調整し創った三角形状の「木型」を生地にあて断ち包丁で断っていきます。この作業が完成時の商品の良し悪しを大きく左右するのだそうです。そして最後の工程の手元は、いろいろな木によって様々な方法で「曲げ」を行います。例えば、火を使って熱を加えるものや熱湯につけてやわらかくするものなどがあります。曲げられた素材には主に天然の染料を数回にわけて何度も繰り返し塗ってきれいなツヤを出します。この手間を掛けた「塗り」が使えば使うほどにツヤを出す深みのある手元を生み出します。他の傘と一番違うのは、16本という骨の数。傘を開いたとき、正十六角形の方が円形に近く、カバーされる面積が広くてインパクトがあります。
また、「傘」という文字にある4つの「人」の文字の意味は、生地・骨・手元・加工の4つの工程を受け持つ匠の数と考えているという前原光榮商店さん。洗練された美しさと機能性を兼ね備えた傘はこの全ての匠の融合なしでは得られないのだとか。日本のものづくりのこだわりと意気込みを感じさせますね。