低音の効きが自然な楽しいサウンド
実際に音を聴いてみると、フロントのサブウーファーが効果的に働いていることが実感できる。サブウーファーというと、低音だけがズンズンと目立っている音を想像する人もいるかと思うが、N-BOXスラッシュはそうではない。フロントドアのスピーカーでは再生しきれない低い周波数を補うイメージ。自然に低域側の再生帯域を広げている。サブウーファーがフロントにあるおかげで、低音の鳴り方に違和感がないのもいい。サブウーファーがカーゴルームなど、後方に設置されたクルマの場合、どうしても低音だけが遅れて聞こえたり、ドラムスのキックの音によって後ろから頭をひっぱたかれた感じに聞こえたりして、どうしても違和感を感じることも少なくないが、N-BOXスラッシュにはそれがなく、フロントドアのスピーカーから鳴る音とのつながりがスムースだ。
クリアでレスポンシブルな中低域も魅力
アルミドームが出す高域は透明感があるクリアな音だし、ドアのケブラーコーン・ウーファーが放つ中低域はレスポンスが良く小気味いいもの。組み合わされていたディーラーオプションのギャザズナビゲーション、VRM-155VFi(205,586円)には、イコライザーやサラウンドを始め、さまざまな音響調整機能が付いていて、最初はいろんな機能がONになっていたため、低域と高域がやや強調気味だったり、響きが過多だったりの違和感もあったのだが、その調整をいったんすべて外してイコライザーを少しいじっただけで、自然なバランスの音が楽しめるようになったし、個人の好みに合わせて調整する自由度もある。軽自動車としては、車内が静かなのも音楽を聴くのにいい環境だ。高速道路を流している程度なら、車内で会話するのに声を張り上げなくていいし、会話できる程度の小さい音量でも、音楽がしっかりと聴こえる。一般的な軽自動車だと、ロードノイズで音楽がかき消されて、どうしても音量を上げ気味になるが、それをしなくていいのだ。しかも音量を上げても歪みで音が刺さるように聞こえて音量を上げるのをためらうということもない。
軽としては異例の静粛性も音楽環境として適している
試乗中には雨の日もあったが、天井に当たる雨音も静か。最近はコストダウンのせいか、コンパクトカーでも天井の雨音が気になるクルマもあるが、N-BOXスラッシュのサウンドマッピングシステム装備車は、防音処理を施しているので、軽自動車としては異例の静かさだし、音楽を聴くのに適した環境だ。またオプションでピュアサウンドブース(38,880円)という吸音材や制振材などのセットも用意。これを追加することで、さらに車内の静粛性を高まるし、スピーカー背面から出る音を吸収&拡散する効果もあって、音はよりクリアで上質になる。試乗車は、ピュアサウンドブースを加えたクルマだ。安原さんはマイカーに自身でスピーカーを交換したりサブウーファーを組み込んだり、DVDデッキを取り付けたりして映画の5.1チャンネル再生を楽しんでいたという。それもあって車内における低音再生の重要性を身をもって知っていたのだろう。その経験も生きたサウンドマッピングシステム。音楽が大好きな人には間違いなくおすすめだし、いい音は望むところだが、後付けでオーディオをカスタマイズするのには躊躇する…という人にもぴったりといえるだろう。
・ホンダ