歯や口が不健康だとなぜ寿命に影響する?
歯を多く失っている人は、野菜や果物の不足傾向がみられました。
近年ではよく知られていますが、歯周病は、細菌性心内膜炎などの心疾患、動脈硬化などの循環系疾患、肺炎などの呼吸器系疾患、骨粗しょう症、腎炎、関節炎の発症等の全身疾患とも密接に関連しているとみられています。
また今回のエビデンス集で、後者の歯を失うと摂取不足になるのは、主に野菜であることも示されました。歯の喪失は咀嚼能力の低下に繋がります。咀嚼能力が低いと容易に摂取できる食品の種類が限定されることが報告されています。特に野菜・果物類には、噛みにくいと考えられている食品が多く、多数歯を失った人たちは、これらの食品摂取を避けることによって摂取量の減少に繋がったと考えられます。
野菜や果物摂取不足によるデメリットとは
野菜・果物類は、ビタミン類やカリウムなどのミネラル、食物繊維の供給源であり、しかもエネルギーや脂肪が少なく、抗酸化成分などの健康維持や疾病予防に役立つ成分を含んでいます。食事バランスガイドにおいて、「野菜」は毎食食べるべき食品で、成人の1 日の摂取量の目安として成人1 日あたり350g以上、そのうち緑黄色野菜120g 以上(健康日本21)としています。「果実」は1 日1 回摂取することが望ましい食品とされ、1日200g の摂取が望ましいとされています(食事バランスガイド)。
「平成25年国民健康栄養調査 概要」を見ると、日本人の平均の摂取量は野菜が271.3g、そのうち緑黄色野菜は83.6g、果物は111.9gです。年齢別に見ると、男女ともに20代よりも50代以降、さらに60代の方が摂取量は多くなるのですが、70代以上では少なくなります。80代以上の数値はありませんが、やはり高齢者になるほど摂取量が減ることで平均値が下がると考えてよいのではないかと思います。
先のエビデンス集では、多数の歯を失っている人は野菜・果物類の摂取量が減少するため、血清中ビタミンC、E、カロテン類の低下が認められていました。これらは抗酸化ビタミンと呼ばれ、健康維持のためにも重要性が認められており、適量摂取は心血管疾患を始めとした多くの生活習慣病の予防に役立つとされています。