絵本

クレヨンが待遇改善要求?『クレヨンからのおねがい』

もしあなたが自分のクレヨンから手紙をもらったらどうしますか? 今回はそんな不思議な体験をした男の子のお話をご紹介。「クレヨンあるある」が楽しいこの作品は、2015年読書感想文コンクール低学年向課題図書の1つです。

執筆者:大橋 悦子

クレヨンあるあるにみんな納得『クレヨンからのおねがい!』

ケビンがクレヨンの箱の上に見つけた手紙。その手紙には色々なクレヨンからケビンへのお願いがしたためられていました。でもね、それは「クレヨンを大事に使ってください。」などというありきたりなお願いなどではありません。そのお願いは「そうだよね~。」「うん、わかるわかる。」とみんなが納得するようなクレヨンあるあるに満ちあふれていたのです! いったいどんなお願いだったのでしょうか? 2015年青少年読書感想文コンクール 小学校低学年向け課題図書にも指定された絵本『クレヨンからのおねがい!』をご紹介します。

これはお悩み相談?それとも必死の直訴状?

『クレヨンのおねがい!』の表紙画像

表紙を見ればクレヨンたちがどれ位真剣に手紙を書いたかわかりますね!

みなさんは、ケビンのクレヨンの中で1番働いているのは何色だと思いますか? 本人の申告によれば(?)、それは赤いクレヨンなのです。消防車もイチゴもリンゴも彼なしでは描けません。その上、みんなが休暇をとるクリスマスだって、休まず働いているのですもの! そんな赤色クレヨンのお願いは「休みが欲しい」でした。

その反対に最も暇なのは、黄土色らしいですよ。出番が少ないことを悩んで、もっと使ってほしいと訴えています。たしかにね……黄土色って小さな子どもたちには使いにくい色なのかもしれません。こんな風に、いろいろな色のクレヨンがそれぞれの主張を繰りひろげ、待遇改善を訴えていきます。

時には、太陽の色は何色がふさわしいかを巡って、黄色と橙色がお手紙の中で熱弁をふるいます。読めば読むほど、どのクレヨンの主張にも一理あって、ケビンは困ってしまいます。

クレヨンの画像

あなたの家のクレヨンもケビンのクレヨンと同じ様に考えているかも!

いえ、私たち読者だって手紙を読むうちに、クレヨンの悩みを解決しようと真剣に考え始めます。なぜなら、それぞれのクレヨンのキャラ設定が秀逸で、読めば読むほど、いつかどこかで出会ったことがあるような人物像(クレヨン像かな?)が浮かび上がってくるので、他人事とは思えなくなるのです。

ケビンもまたクレヨンたちの想いに真剣に向き合いました。そして彼が出した答えは、見開きいっぱいに描かれた1枚の絵に集約されます。この絵がとにかく素晴らしい! 幸福感いっぱいの画面から色が飛び出してくるようです。彼は、先生からこの絵をとても褒められたのですが、それを1番喜んでいるのは、ケビン自身ではなくケビンのクレヨンたちかもしれませんね。


【書籍データ】
書籍名:クレヨンからのおねがい
作:ドリュー・デイウォルト 絵: オリヴァー・ジェファーズ 訳:木坂涼
価格:1620円
出版社:ほるぷ出版
推奨年齢:4歳くらいから
(2015年青少年読書感想文コンクール 小学校低学年向け課題図書)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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