『はこぶ』ことを通して人類の進化を追いかける

あなたの目の前に、美味しそうなケーキがあります。もし、大好きな人に食べさせてあげたいなあ……と思ったら、どうしますか? 小さなケーキ1つなら箱に入れて、大切に運びますね。では、もっと数が多かったり大きなものだったらどうしましょう? あるいは、もっと遠くにいる人に届けたいときは? 大昔から私たち人間は、誰かに何かを運ぶために知恵を絞ってきました。今回は、何かを「運ぶ」ことに焦点を当てて人類の進化を追いかけた絵本をご紹介します。

より多く、より速く、より遠くへ! 運ぶことは届けること

絵本『はこぶ』の表紙画像

表紙だけでも10以上の運ぶ手段や道具が描かれていてビックリ!

表紙を開くと、見返し遊び紙に真っ赤なリンゴが1つ描かれています。どうやら、扉に描かれた原始人の男性が持っていたリンゴのようです。彼はリンゴの他にも大根やスイカを持っていますが、数が多くて1人では持ちきれません。すると彼は、入れ物を利用して運ぶことを思いつきました。

時は移り、人々は入れ物の形や運び方を考え、運ぶために動物の力を借りたり動力を利用したりするようになりました。より多く、より速く、より遠くへ物を運ぶ必要があったからです。絵本『はこぶ』では、その人間の歴史を「運ぶ」ことだけに焦点を定めて描いています。

現在の子どもたちには馴染みの薄い大八車や牛車、自転車がひくリヤカーなど懐かしい運搬道具もたくさん登場して、じっくりと絵を眺めながらページをめくる楽しさは格別です。ところが、時代が進み車が増えて道路の延伸工事が盛んになった頃には、小さな違和感を覚える読者もでてくるようです。

伸び続ける道路のイメージ画像

道路は物流を支える大切なインフラですが……

恐竜の骨の化石が眠る地面には大きな地下トンネルが建設され、青い海の上には大きな橋が作られていきます。「はこべ はこべ とどけろ とどけろ」そんな一文が添えられた場面は、人類の知恵や進化より人間の愚かさを描いているようにも思えます。

そんな中、物流はさらに進化し、ついにロケットが宇宙ステーションに品物を届ける時代になりました。さて、宇宙ステーションにはいったい何が届けられたのでしょうか? はるばる宇宙を超えて届けられたもの……それは真っ赤なリンゴでした。大昔に原始人が誰かのために運ぼうとしたのと同じ赤いリンゴ。太古の時代から現代までその方法は変わっても、何かを届ける「気持ち」には違いがないのかもしれません。

私たちは、未来にわたり何をどこまで運び続けなければならないのか……読者にそんな疑問が湧きおこる中、届けられた真っ赤なリンゴが、この作品の本当のテーマを象徴しているのかもしれません。


【書籍データ】
書籍名:はこぶ
作:鎌田歩
価格:1404円
出版社:教育画劇
推奨年齢:5歳くらいから
 (2015年青少年読書感想文コンクール 小学校低学年向け課題図書)
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