日帰りでも十分楽しめる、鎌倉観光モデルコース
神社やお寺だけでなく、海、山、カフェなどさまざまな見所のある鎌倉。日帰りで鎌倉のいろいろな魅力を体験したいけれど、どうやって巡ればいいか分からないという声をよく聞きます。また、鎌倉の市街地は交通渋滞が多いので、バスやタクシーだと、目的地に到着するまでに思ったよりも時間がかかってしまうことがあります。 そこで今回ご紹介するのが、鎌倉の人気観光名所7ヶ所を徒歩で一日で巡ることができる、「鎌倉観光のゴールデンルート」とも呼べるモデルコース。
コースの所要時間は、歩くペースや観光スポットの見学時間にもよりますが、お昼休憩の時間も含めて5~6時間くらいです。
<目次>
【その1】鎌倉観光で必ず訪れたい、鶴岡八幡宮
スタートは鎌倉駅。東口改札を出たら、まずは、鎌倉観光に来たら必ず訪れたい神社、鶴岡八幡宮へ向かいましょう。鎌倉駅から鶴岡八幡宮へは、人気のカフェや土産物屋などが並ぶ「小町通り」を歩くルートと、鎌倉市街を南北に貫くメインストリートである「若宮大路」を歩くルートがあり、どちらを歩いても10分ほど。今回は若宮大路を歩きます。
若宮大路は、平安京(京都)でいえば、朱雀大路にあたります。今に続く鎌倉の市街地の原型をつくったのは、鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝(1147~1199年)ですが、京都育ちの頼朝は、鶴岡八幡宮を平安京の「内裏(だいり)」に、若宮大路を「朱雀大路」に見立てて鎌倉の街づくりを進めました。 若宮大路の中央には、一段高く盛り土された鶴岡八幡宮の正式な参道である「段葛(だんかずら)」があります。段葛は頼朝夫人の政子の安産祈願のために造営されたと伝わり、道の両側には桜が植えられています。
鶴岡八幡宮境内に入ると、まず参道の両側に源氏池と平家池(あわせて源平池)が広がっています。池のほとりでは、正月には珍しい冬牡丹が花を咲かせ、春は桜と牡丹が咲き、夏には池一面がハスの花でいっぱいになります。 さらに境内奥へと進み、石段を上って本宮へ向かいましょう。ここで注意して見て欲しいのが、楼門にかけられている扁額の「八幡宮」の文字。「八」の文字をよく見ると、2羽の鳩の形をしていますね。鳩は八幡神の使いとされ、鶴岡八幡宮の境内にもたくさんの鳩がいて、大切にされています。鎌倉を代表するお土産「鳩サブレー」も、八幡宮の鳩をモチーフにしたものです。
なお、鶴岡八幡宮は神社という"祈り"の場であるとともに、鎌倉観光の中心でもあり、春の「鎌倉まつり」をはじめ、一年を通じて、様々な催しが行われます。
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■鶴岡八幡宮
住所:鎌倉市雪ノ下2-1-31
アクセス:「鎌倉駅」東口から徒歩約10分
地図:鶴岡八幡宮ホームページ
【その2】桜と紅葉の名所、源氏山公園で縁結び
鶴岡八幡宮境内を出て、県道を右手(西)に進み、次は源氏山へ向かいます。県道が右へカーブするところで左手の小町通りに入り、その先をさらに右折。「鎌倉市川喜多映画記念館」や、「巌(いわや)不動」の前を過ぎ、さらに横須賀線の踏切を渡って寿福寺の門前に出ます。寿福寺は本尊が特別公開される時期を除き、普段はお堂を拝観することはできません。寿福寺門前からは、谷戸(やと)の奥にある海蔵寺の方角を目指して歩いて行き、途中の道標に「化粧坂切通(けわいざかきりどおし)」と記されているのを見つけてください。この化粧坂を経由し、源氏山公園を目指しましょう(化粧坂は、雨後はぬかるむので注意)。 源氏山は、標高93メートルほどの小高い丘。源頼朝の祖先にあたる源義家が、奥州の戦(後三年の役)に向かうときに、山頂に源氏の象徴である白旗を立てて勝利を祈願したことから、別名「旗立山」とも呼ばれます。現在は、源氏山公園として整備され、桜と紅葉の名所として知られます。
源氏山の山頂部には縁結びに御利益があるとされる葛原岡神社があり、願いが書かれたハート型の絵馬が並んでいます。また、少し離れた広場には、頼朝の鎌倉入り800年を記念して建立された鎧姿の頼朝の銅像もあります。 <DATA>
■源氏山公園
住所:鎌倉市梶原5-9-1
アクセス:「鎌倉駅」西口から徒歩約35分
地図:葛原岡神社ホームページ
【その3】金運アップ! 銭洗弁財天
源氏山から坂道を少し下ったところに、銭洗弁財天宇賀福神社の入口があります。この神社の伝説には源頼朝が登場します。頼朝が夢の中で「西北の仙境に湧き出している水をくんで神仏を供養すれば、天下が平和になる」とのお告げを受け、そのお告げにあった泉を探し当て、神様をおまつりしたのが銭洗弁財天のはじまりと伝わります。
この泉の湧き水で神仏を供養すると、国は平穏を取り戻し、民の生活も豊かになったといい、それがいつのまにか、「湧き水でお金を洗うと増える」という財運に結びつけられたようで、今も湧き水「銭洗水」でお金を洗う、多くの参詣者で境内がにぎわっています。また、銭洗弁財天には、人気の小判型のお守りがあります。ぜひ、財布の中に入れておきたいですね。 <DATA>
■銭洗弁財天
住所:鎌倉市佐助2-25-16
アクセス:「鎌倉駅」西口から徒歩約25分
地図:鎌倉市観光協会ホームページ
【その4】朱色の鳥居が続く、佐助稲荷神社参道
次の目的地である佐助稲荷神社へは、銭洗弁財天の入口からさらに坂道を下り、住宅地の中を歩いて徒歩10分ほど。この神社で素晴らしいのが、参道に林立する数多くの朱色の鳥居。 最近、京都の伏見稲荷大社の「千本鳥居」が、外国人観光客にすごく人気があるそうです。鳥居の数こそ伏見稲荷に比べれば少ないものの、この佐助稲荷神社参道や境内の"別世界"に入り込んだような雰囲気は、とても味わい深いと思います。ちなみに、この神社にまつられる稲荷神が頼朝に出兵をうながし、平家討伐・鎌倉幕府樹立につながったという伝説から、「出世稲荷」の別名があります。
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■佐助稲荷神社
住所:鎌倉市佐助2-22-12
アクセス:「鎌倉駅」西口から徒歩約15分
地図:佐助稲荷神社ホームページ
【その5】鎌倉のシンボル大仏様
佐助稲荷神社から大仏様が鎮座する長谷の高徳院(鎌倉大仏殿高徳院)までは、住宅地の中を2キロほど歩くことになります。途中、吉野葛を使った名物の「くずきり」をいただける「くずきり みのわ」(水・土曜のみ営業)などで休憩するのもおすすめです。 大仏様のいらっしゃる高徳院に到着すると、人の多さに驚くかもしれません。鎌倉は最近、平日でもオーバーツーリズム(過度な観光客の来訪)気味なので、拝観チケット売り場には行列ができていると思います。 さて、有名な大仏ですが、建立時の明確な資料が残っておらず、謎が多いのも事実。鎌倉時代の中頃に、僧・浄光(じょうこう)が、民衆の浄財を集めて完成したということや、当初は、木造の大仏が建てられたが、大風で倒れてしまい、1252(建長4)年、現在の青銅の大仏が再建されたことなどが、わずかに伝わるばかり。なお、少し意外ですが、数ある鎌倉の仏像の中で国宝に指定されているのは、この大仏だけなのだそうです。
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■鎌倉大仏殿 高徳院
住所:鎌倉市長谷4-2-28
アクセス:江ノ電「長谷駅」より徒歩約10分
地図:鎌倉大仏殿高徳院ホームページ
【その6】長谷観音は、日本の木造仏で最大級
大仏からさらに徒歩5分ほどの場所にあるのが、大仏と並ぶ人気スポット、長谷観音を本尊とする長谷寺です。本尊の十一面観音像(長谷観音)は、高さ9.18メートルもあり、歴史のある木造の仏像としては日本最大級とされます。 長谷寺はアジサイの名所としても知られており、開花時には約2500株のアジサイを一目見ようと眺望散策路に長い待ち行列ができます。また、紅葉の季節には夜間ライトアップが行われます。<DATA>
■長谷寺
住所:鎌倉市長谷3-11-2
アクセス:江ノ電「長谷駅」より徒歩約5分
地図:長谷寺ホームページ
【その7】ロマン溢れる別荘建築、鎌倉文学館へ
※鎌倉文学館は大規模修繕のため、2023年度から2026年度までの4年間休館しています。「長谷観音前」の交差点から、由比ヶ浜通りを真っ直ぐに進み、「文学館入口」交差点を左に入っていくと、その先にあるのが広大な敷地を持つ旧前田侯爵邸。「加賀百万石」で知られる大名の子孫、前田家の鎌倉別邸として建てられた青屋根の洋館は、現在、鎌倉文学館として利用されており、鎌倉ゆかりの文学者にまつわる、さまざまな展示がされています。 鎌倉文学館では、春と秋、年2回、庭園の一角にあるローズガーデンに、200株以上のバラが花を咲かせます。とくに春のバラは一斉に咲き、華やかです。5月には「バラまつり」が開催され、庭園でクラシック音楽が演奏される「ローズガーデンコンサート」などのイベントが催されます。
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■鎌倉文学館
住所:鎌倉市長谷1-5-3
アクセス:江ノ電「由比ガ浜駅」より徒歩約7分
地図:鎌倉市ホームページ
散歩のシメは江ノ電の車窓から眺める湘南の海
さて、先ほどの「文学館入口」交差点まで戻り、その先の細道を歩いて行くと、左手に江ノ電の由比ヶ浜駅があります。ここから江ノ電に乗れば、鎌倉にも藤沢にも出られます。藤沢方面の電車に乗れば、途中、車窓には湘南の海の広がりが見られます(稲村ヶ崎駅-腰越駅間)。夕日の海を車窓から楽しんでみてはいかがでしょうか。
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