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「インスタ映え」料理に潜む食中毒リスクと予防法

ジメジメとした梅雨は、美味しい食事で元気をチャージしたいもの。しかし、たっぷりの生野菜、カラフルなジャーサラダ、味噌や漬物などの自家製発酵食品、手作り弁当にこだわりカレーなど、見た目もよく清潔そうな「インスタ映え」料理でも、菌、食中毒リスクと無縁ではありません。キッチン周りで気をつけるべきポイントを解説します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

湿度の高い梅雨シーズンは細菌による食中毒リスクが増加

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特に湿度・温度が高い時期は、手や調理器具、食品の洗浄や殺菌などに気を配りましょう。

食中毒を引き起こす原因には、「細菌」と「ウイルス」、「自然毒」「化学物質」などがあります。このなかでも細菌の多くは水分を好むので、湿度が高いジメジメした梅雨時から夏の間は、細菌による食中毒が起こりやすくなります。

夏バテ予防のためにも、この時期にしっかり食べて心身ともに健康を保っておきたいものですが、たっぷりの生野菜、カラフルなジャーサラダ、味噌や漬物などの自家製発酵食品、手作り弁当、こだわりカレーなど、健康的で、見た目もよく清潔そうな料理でも、食中毒のリスクとは無縁ではありません。いわゆる「インスタ映え」する料理やキッチンでも、注意ポイントを押さえておかないと、菌増殖のリスクがあるのです。梅雨シーズンから夏にかけて、特に注意したいキッチン周りの食中毒予防ポイントをご紹介します。

生野菜やスタイリッシュなジャーサラダにも潜む食中毒リスク

人気がある一方で、衛生面がやや気になるのが、ジャーサラダなどの料理や果物などの生物を詰めるガラス容器。生野菜や果物は彩りよく詰めると、カラフルでスタイリッシュですし、みずみずしく健康的なイメージもあります。

しっかりとしたガラス容器は機密性の高さも魅力の一つですが、生野菜などを入れる場合は注意が必要。一般に食品工場で製造された加工食品は、衛生的な管理のもと、細菌が繁殖しにくい環境で製造された上で、パッキングされています。また消費期限などが示されています。

しかし家庭で、生野菜や果物を詰めた後、時間をおいて食べる場合には注意が必要です。

■ジャーサラダの容器にすべき食中毒対策
容器は、煮沸消毒やアルコール消毒してから使いましょう。煮沸消毒の時間や温度の目安として、次のような条件が推奨されています。
  •   100℃  30秒間
  •   90℃以上  5分間以上
  •   80℃  5分間以上
  •   75℃以上  15分間以上
  •   沸騰してから5分間以上
ガラス容器は、熱湯に突然入れると割れたりすることがあります。耐熱温度を確認し、水の状態から入れて加熱しましょう。

また容器本体だけでなく、蓋の消毒もお忘れなく。容器とフタを密に接合するために、口の部分に溝があるねじ蓋になっているものがありますが、これも盲点になりやすいもの。その部分が濡れたり汚れていないかチェックしてください。
   
せっかく煮沸消毒した容器を、むやみに手で触ったり、いつも使っているふきんで拭くと、手やふきんを媒介して雑菌がつきます。内側は触らずに、新しいふきんやザルなどの上にふせて乾かしましょう。水分があると菌が増えるので、生乾きの時に食品を入れないよう、完全に乾かしてください。

こうした消毒や料理をするプロセスも、事前にきちんと手や調理器具を清潔にしてから。まな板や包丁なども、使用前には必ず洗ったり、アルコール消毒を行いましょう。

サラダで食中毒も……生野菜やプチトマトのヘタにも注意

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梅雨から夏の間のお弁当作りには、細心の注意を。生野菜は入れずに、ごはんやおかずも十分冷ましてから詰めましょう。

土つきの野菜などは新鮮なイメージがあり、写真映えもするものですが、土壌には驚くほどたくさんの菌が存在しています。よく洗ったつもりでも、葉と葉の間、根などに土がついていることがあります。また意外に思われるかもしれませんが、プチトマトなどのヘタにも菌が残りやすいもの。

さらに、野菜や果物はカットすると表面積が増え、また栄養のある部分が空気に接することで細菌が増えやすくなります。加熱したとしても、菌の好きな栄養・水分・温度などの条件が整うと、細菌は増えます。

食材は洗った後よく水分をきって拭き取ってからサラダなどに調味し、とにかく時間をおかず、作ったらできるだけ早めに食べることが肝心です。

自家製発酵食品に潜む食中毒リスク

最近はホームメイドすることも人気で、自家製の発酵食品などを作る人も増えています。ガイド自身も、自家製味噌や漬物などを作ったりしますが、ホームメイドをして気がついたことは、安全かどうかや賞味期限をどうやって判断するのかということでした。

日本の多くの食品関連の事業者は、生産体制においては衛生管理を徹底し、製品の安全性の確保に努めています。だからこそ、市販の食品を、私たち消費者は安心して食べられるのです。しかし、自家製食品は自己責任で判断しなければなりません。

自家製食品を作る際には、先述したように手や調理器具を清潔にして、食品もよく洗浄し、保存容器の消毒に十分に注意してください。

ネット情報の一部では「手で混ぜると発酵を促す」とか、「酵素が健康やダイエットに役立つ」といった情報が紹介されていることもあるようですが、これらに科学的根拠はありません。きちんと洗浄・殺菌されていない素手で混ぜたりすることで、食中毒の原因となる細菌を加えるリスクは上がってしまいますから、決して行わないようにしましょう。

夏場のお弁当作りですべき食中毒対策

多くの食中毒細菌は、種類によりますが10~45℃が適温帯で、35℃前後でよく増殖します。加熱する際は中心までよく熱を通します。特に肉や魚は中心部を75℃以上で1分以上加熱することが農林水産省でも勧めています。冷凍してあるおかず、あるいは前日の残り物などを使う時には、電子レンジ加熱は、シチューなどの濃度のある料理はムラになりやすいので、全体を混ぜるなどして、必ず全体をしっかり温めましょう。

水分や栄養が多いと細菌も増殖するので、水分の多いおかずは避けましょう。また、熱々のごはんを入れてすぐにふたをすると水滴が付着する上、温かいので細菌が増殖します。

冷たいおかずと熱いごはんを同時にいれることも、細菌の増殖しやすい温度が長くなります。ごはんの湯気が十分収まってから冷めたおかずをつめましょう。

肉や魚はもちろんのこと、仕切りの役目として使われるレタスやキャベツといった野菜も、生のままでは入れないこと。切らずに使えるプチトマトは、彩りもよく重宝しますが、上述の通りヘタの部分に細菌がつきやすいので気をつけましょう。

もちろんお弁当箱も清潔に。わさびや梅干しは、殺菌・抗菌成分が含まれていますので、組み合わせとしては理にかなっていますが、お弁当全体を殺菌できるだけの量を食品で摂ろうと思うと、かなりの量になってしまい、現実的ではありません。梅干しさえいれておけば大丈夫などという過信も禁物です。

また保温ジャータイプのお弁当箱もありますが、6時間以内といった目安がありますから(※時間はメーカーや商品により異なる場合あり)、長時間おかないようにしましょう。また保温容器にむいていない温度、食品などもありますので、使用上の注意をよく読んでから使うようにしてください。

カレーも含め、煮物、炒め物などのおかずの常温放置は危険

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大量にまとめて作り置きする料理も、手早く冷まして小分けして冷凍! キッチンに長い時間置きっぱなしにしないようにしましょう。

キッチン周りでは、調理する手や器具を清潔にする、消毒する、しっかり加熱するということは大前提ですが、意外としてしまいがちなのが作った料理の常温放置。

家族の食事時間がまちまちの場合などは、どうしてもコンロの上に鍋ごと置きっ放しにして、食べる際に温めるというパターンになりがちです。また特にカレーなどは、スパイスたっぷりで腐敗しにくいイメージを持っている方が多いようですが、こちらも管理の仕方次第と言えます。

というのも、細菌の中には、熱に強い殻である「芽胞」を作るという特徴を持ったウェルシュ菌やセレウス菌などがあります。以前にも、前日から作ったカレーで食中毒がおこり、患者の便及び残品のカレーからウェルシュ菌が検出されたことがあります。

大量調理や作り置きはしない方がよいのですが、前日から作り置きしておくような場合は、以下のような点に気をつけましょう。
  • 調理した後は、手早く中まで十分冷まし、冷蔵・冷凍して保管する(10℃以下)
  • 温め直すときに、よく下から混ぜて空気を入れ、十分加熱する(55℃以上)
セレウス菌の芽胞も熱に強いタイプで、特に穀類、豆類、香辛料などはセレウス菌に汚染されていることが多いと言われています。セレウス菌の芽胞は、90℃で60分の加熱でも耐えられます。

チャーハンやパスタ、焼きそばなど、デイキャンプなどでもよく作られるメニューです。加熱調理していても過信しないようにしましょう。

ウェルシュ菌やセレウス菌が繁殖する状況など、詳しくは以前の記事「そのうっかりが食中毒につながるかも」もあわせてお読みください。

便利な時代で、安全においしい食を楽しんでいる私たちですが、食について「リスクゼロ」になることはありません。見た目や華やかさは食欲にも影響するのでこだわるのはよいことですが、リスクがあることも理解して、それぞれが家庭でできることを意識して行い食中毒を予防していきましょう。

■参考
生の野菜や果物を安全でおいしく食べるために(農林水産省)
食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント(政府広報オンライン)
・集団におけるHACCPシステムの導入に関する検討(天使大学紀要2001)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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