6月の満月とイチゴの関係
ネイティブ・アメリカンは、1年のうちに12回現れる満月を大自然や人間のいとなみの節目として考え、季節に応じてそれぞれの満月に名称をつけました。その由来は、狩りでしとめた獲物や収穫物の名前など。やがて満月の名称は、ヨーロッパからの移住者へ伝わり、英語の名称に変わっていきました。赤い満月は甘酸っぱいイチゴ味!?
日本では春のイメージが強いイチゴですが、本来の旬は初夏。俳句では、イチゴは夏の季語です。
ネイティブ・アメリカンが、初夏の収穫物であるイチゴと6月の満月を結びつけたことは、自然の成り行きといえるでしょう。けれど、ひとつ見逃せないことがあります。それは色。イチゴの鮮やかな赤色と、満月の色が関係していたことは想像に難くありません。
というのも、この時季の満月は赤みがかって見えることがあるから。それはなぜでしょう? ストロベリームーンを解き明かすカギは「夏至」にあります。
夏至の日に近い満月が赤く見える理由
どの季節でも満月になるのは、地球を真ん中にして月が太陽の反対側にいるときです。ですから、おおざっぱにいってしまうと、太陽の高さと満月の高さは逆の関係となります。日本を含む北半球では、太陽の高さは夏に高く、冬に低くなるので、満月の高さは夏に低く、冬に高くなります。さらにいえば、1年のうちで太陽の南中高度がもっとも高くなる夏至の頃の満月は、真南に昇ったときでも地平線にずいぶん近いということです。
たとえば東京の場合。6月の満月(夏至に近い満月)の高さは、南の空高く昇ったときでも、地平線から30度くらいです。ひじを曲げずに、腕をまっすぐに伸ばした状態で空に向けたげんこつの大きさが約10度ですから、地平線からげんこつ3つ分ほどの高さを想像すれば、月の高さがかなり低いことがわかるでしょう。
ちなみに、12月の満月(冬至に近い満月)の高さは、なんと80度超え。天頂付近まで昇ってきます。夏と冬では、満月の高さはずいぶん違うものなのです。
朝日や夕日が赤く見えるように、月も高度が低いと赤みを帯びて見えます。そのため、地平線に近い空を移動する6月の満月(夏至に近い満月)は、夜中でも赤みがかって(またはオレンジ色や、濃い黄色などに)見えることがあるわけです。
しかし、品種改良されたイチゴのように真っ赤になるわけではありませんし、当日の天候や大気の状態によっては赤みを帯びない場合も十分に考えられます。
神秘的な赤い満月。言い伝えによれば、見た者は幸せになれるのだそう
毎年、夏至は6月21日頃です。2018年の場合、夏至は6月21日(木)なので、一番近い満月の日である6月28日(木)がストロベリームーンとなります。
ここで、夏至の日と満月がめぐってくるタイミングに注目してみましょう。
たとえば2016年の場合、夏至の翌日が満月でタイミングが近かったのですが、2015年の夏至は6月22日で、6月の満月は6月3日、夏至の日に一番近い満月は暦月が変わってしまって7月2日でした。このように、年によっては夏至の日と満月の日が離れてしまうこともあるのです。
ストロベリームーンは学術用語ではないので、明確な定義がなく、少々曖昧なところがあります。「ストロベリームーン=赤い満月」というわけでもありません。
ですから、ストロベリームーンとは、
・6月の満月
・夏至の日に近い満月
・初夏に見えることにある赤みがかった満月
というように、風情を表す月の名称としてとらえるのがよさそうです。
なお、出所ははっきりしませんが、ストロベリームーンを見ると「幸せになれる」「好きな人と結ばれる(結婚できる)」といわれています。そんな言い伝えを知っておくと、ストロベリームーンを見るときのワクワク感が増しますね。この時季ならではの、ストロベリームーン。初夏の夜気を感じながら、じっくりと味わってください。
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