東京・神奈川・千葉・埼玉に住む/東京市部[武蔵野市・三鷹市・調布市・府中市・西東京市ほか]

狛江、緑と川、絵手紙と音楽のある静かな街

世田谷区と多摩川に挟まれた狛江市は東京都の市では最小、全国でも2番目に小さな街。多摩川と野川が流れる市域には緑も多く、発祥の地として街中には絵手紙もあちこちに。そんな街の小さい魅力を見てきました。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

市役所から半径2kmに市域、
コンパクトな街、狛江

兜塚古墳

都の史跡となっている兜塚古墳。こんもりとした小さな高まりがかろうじて分かる(クリックで拡大)

市役所を中心とした半径約2kmの円内に収まるコンパクトな街、狛江(狛江市)。南に多摩川、北は国分寺崖線、野川に面しており、少し歩けば水辺の風景がある街で、その立地からでしょう、縄文、弥生時代から人が住んできた場所でもあります。現在はその大半が宅地開発などによって姿を消しましたが、5世紀半ばから6世紀半ばまでの古墳が多かったことでも知られ、その古墳の多さを「狛江百塚」と称したのだとか。現在もいくつかの古墳の一部が住宅地の中にひっそりと佇んでいます。

 

畑

住宅地の中に突然畑。歩いていると野菜の直売所があるなど、あちこちで地元産の野菜にお目にかかる(クリックで拡大)

その狛江が宅地として開発されるようになったのは戦後の高度経済成長期に入ってから。それ以前は畑地を中心にした農村で、米や麦の他に果樹蔬菜などの栽培がメインの産業でした。養蚕に加え、多摩川での漁業が副業だったとも聞きました。そのためか、今でも市内には畑が多く残されており、狛江で生産された野菜には狛江ブランドとして独自のタグなどを付けて市内で販売されています。ただ、地元で採れたというだけではなく、各生産工程での安全管理などがしっかりしていて安心というのが売りなのだとか。市内には市民農園もあり、土に親しむ暮らしができます。

多摩川、野川に農地、市民農園、
自然が豊富な街

多摩川

多摩川脇の遊歩道にはいつも自転車に乗る人、歩く人、散歩する人などの姿が。川べりで寝ころぶ人なども多く、ご近所にこんな空間があるのは贅沢かも(クリックで拡大)

多摩川、野川の2つの河川も市の財産。市では多摩川の川辺を利用して子どもたちが自然と親しむ「水辺の楽校」を平成13年から実施していますし、市制20周年記念でスタートした狛江古代カップ多摩川いかだレースはなんと、そのまま四半世紀後の今も実施されています。冗談のようなイベントを延々続けてきた狛江市民、センスが良いなあと思います。

 
絵手紙

駅構内、改札前にあった絵手紙の掲示。その他、商店の店頭、街角のガードレールなど、本当に至るところに絵手紙が飾られている(クリックで拡大)

狛江由来のものといえば、もうひとつ、絵手紙があります。狛江はその発祥の地だそうで、駅構内から始まって市内のあちこちには絵手紙が掲出されており、ついつい立ち止まって眺めてしまうほど。これは確実に他の街にはないものと言えるでしょう。

 
コンサート風景

駅のすぐ前、緑を背にしたコンサート。駅に隣接したエコルマホールもよく会場になっている(クリックで拡大)

もうひとつ、定着していることに驚いたのが平成18年にスタートした音楽の街狛江構想。駅前コンサートなど、毎月数多くのイベントがコンスタントに開催されてきており、取材当日も駅を出たところでコンサートに出くわし、かなり興奮。駅を出た途端に音楽が聞こえる街もなかなかないはずです。

 
弁天池

駅前にある緑地から続く弁財天池の湧水。小さいながらも澄んだ水がたたえられていた。この辺りは鬱蒼とした緑が続き、ひんやりした雰囲気(クリックで拡大)

さらにそのコンサート会場となっている駅前に鬱蒼とした緑があることも感動ポイントのひとつ。ここは特別緑地保全地区となっており、普段は立ち入ることができない場所。湧水などもあり、武蔵野の原風景が保存されているのだとか。それが駅前にあるのは驚き。ここ以外にも並木のきれいな通りは多く、のんびり散策するにはうってつけです。

 
狛江市役所

狛江市役所。敷地内には狛江野菜を出すレストランもある(クリックで拡大)

緑や水を楽しみながら歩いてみて思ったのは、街が小さいのはメリットでもあるということ。小さな街ですから、市役所へ行く、郵便局に行く、買い物に行くその他で同じ場所を行き来することになり、知っている顔に会いやすいのです。当然、会話もあるわけで、地域に密着した暮らしを志向する人には暮らしやすいのではないでしょうか。

 

駅前の商店街

駅東側に広がる商店街。西側にはロータリーが整備されているが、東側はこじんまりした感じ(クリックで拡大)

生活の利便性で考えても、駅の周辺にスーパー、飲食店その他が集まっており、昔から小田急沿線にある大学の学生たちが多く住んできたことから、物価は比較的安め。学生の多い街に多いラーメン屋さんももちろん、たくさんあります。賃貸住宅の家賃も手頃で、街を歩いているとアパートを多く見かけます。逆にマンションはあまり多くないので、どうしてもマンションじゃなきゃダメという人は不向きかもしれません。

 

小田急線

狛江市内にはもう一駅、和泉多摩川駅がある。狛江より駅前はコンパクト(クリックで拡大)

足回りでは急行は止まらないものの、新宿までは約20分。東京メトロ千代田線との直通運転もあり、都心へのアクセスも抜群とまでは言えないものの、かなり便利です。

 
では、最後に気になる住宅事情を見ていきましょう。

マンション供給は少な目、
学生向けのアパート、一戸建ては豊富

むいから民家園

古民家を展示しているむいから民家園。ここに限らず、子どもの姿を多く見かけた。ファミリーには住みやすい街ということだろう(クリックで拡大)

市域が狭いということから分かるように、当然、それほど住宅適地が残されているわけではありません。一戸建てであれば、かつてあった住宅を取り壊して建直すことがあるので、ある程度はコンスタントに供給されていますが、マンションとなると希少。ことに新築マンションはごくたまに供給されているといってもいいほど。

 
マンション

市役所のあるエリア周辺にはマンションが多いが、それ以外のエリアは基本、一戸建てと小規模な集合住宅が中心になっている。ちょうど和泉多摩川の物件のモデルルームができていた(クリックで拡大)

加えて、以前は隣接する世田谷区では価格的に折り合わないからと狛江で探す人もいましたが、現在では新築マンションの3.3平米単価で250万円以上とも言われており、価格で狛江という探し方は難しい様子。個人的には大きな自治体である世田谷区とは異なる魅力のある街ですから、そこから選んでいただききたいものと思います。2015年時点ではたまたま新築マンションの予定がありますが、ファミリータイプで考えると数千万円くらいにはなるのではないでしょうか。

 

中古マンションも物件はそれほど多くはなく、狛江駅を最寄りとする徒歩15分以内で考えるとさらに絞られます。築40年以上と古い物件もあり、そうした物件だと専有面積50平米前後で2000万円以下。古い物件ではあまり広いタイプがないので、ファミリーでは難しいかもしれません。

もう少し新しく、築30年前後になると3000万円台が目安となり、60~75平米くらいの3LDKなども。さらに築10年台となると4000万円から広さによっては5000万円ということもあり、かなり古くならないと安くはならないということが分かります。

新築建売一戸建ては土地面積100平米が多く、価格は4000万円前後。土地のみの分譲、建築条件付の土地の分譲も少なからずあります。

狛江のアパート

駅からの距離に関わらず、アパートはよく見かけた。それほど古いモノもない代わりに、いかにも新築という物件も少なかった(クリックで拡大9

賃貸ではワンルームマンションが6万円~、2DKマンションで9万円~。アパートになるとワンルームで4~5万円が平均ですが、実際には3万円台、専有面積10~15平米という物件もかなりあります。

 
並木のある通り

きれいな並木が続く場所も多く、散策して楽しい街でもある。のんびり、名所めぐりのつもりで訪れてみてはどうだろう(クリックで拡大)

市域は全体に平らで自転車利用などで動きやすく、全体にのんびりした風情。人の顔が見える、静かな暮らしを望む人にはお勧めです。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます