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人はそれを”怪演”と呼ぶ 豹変を見せる俳優たち

鬼気迫る白熱の演技に、手に汗握ることがあります。そんな演技を”怪演”と呼ぶことがあります。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

ドラマを観ていると、ときに凄まじい場面に出合うことがあります。嫌な予感に背中がゾクゾクしたり、鬼気迫る演技に圧倒され、身動きできなくなったりします。そんな演技を”怪演”と呼ぶこともあります。今回は見事な”怪演”を見せてくれる俳優を追ってみました。


透明な心から完璧な後味の悪さまで 窪田正孝

演技力に定評のある若手実力派俳優として大活躍の窪田正孝はおぞましい憎悪の塊や驚愕の豹変を演じることができる希有な俳優と言えます。『Nのために』では優しさにあふれた素朴な青年を、『アルジャーノンに花束を』では、どこか屈折しているものの現実をしっかり見ている青年を演じています。

凄惨な演技を見せたのが『ジョーカー 許されざる捜査官』。卑劣な無差別殺人鬼の不気味さ、気味の悪さは衝撃的でした。突如むき出す牙。不快な上目づかい。なぜここまで演じることができるのか、そう考えると俳優としての力量を痛感します。見ている方が戸惑うくらいの冷酷な演技から心温まる癒しの演技まで、その幅広さは窪田正孝だけが有する研ぎ澄まされた柔軟な感度によるもの。まだ開かれていない引き出しが数多くありそうです。


高らかに嘲笑い自らを振り切る 高畑淳子

『Dr.倫太郎』では不安定な母親の激しさを鬼の形相で演じています。今まで泣いていたかと思うと笑い出す。笑っていたかと思うと怒り出す。相手の一番深い傷となる言葉を探り当てる動物的カンと、その言葉を振りかざす烈々たる態度は絶品です。この母親が放つ濁ったエネルギーは、作品の核となる人間の底知れぬ心を象徴しているように思います。

『SP~警視庁警護課』で演じた政治家・石鍋キリ子の堂々たる風貌、『ドクターX~外科医・大門未知子~』で演じた実直な看護師長など、確固たる志のある人間に対し、『Dr.倫太郎』ではフワフワと生きる志なき人間の心の波を見事に表現しています。高畑淳子の俳優としてのパワーと振り幅に心地よさすら感じます。

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