ピアノの発表会で緊張しない方法はある?
ピアノの発表会で緊張しない方法はないなら、どうコントロールするか?
緊張は「悪いもの」と敵視されますが、緊張すると普段よりもグッと集中力が高まるので、それを上手に利用できれば一人でリラックスして練習している時とは違う、熱のこもった良い演奏になることもあります。
緊張と上手につきあう
緊張は敵ではない!しっかりコントロールすれば、ふだんより集中力がアップして本番の強い味方になる
【目次】
ふだんの練習の中でできる対処法
■無意識で弾き流しているところがないかチェックするふだんの練習内容を見直すと、緊張した時の演奏の乱れを最小限に食い止められる要因があるものです。たとえば、無意識で弾き流している部分。特に問題なく弾けているところは、意外に指の動きを意識せず、よく音を聞かずに弾いているものです。
緊張すると、慎重になるあまりにふだんあまり考えずに弾いているところに意識が行ってしまい、「いつもこんな音を弾いていたかな?」「この指使いでいいのかな?」と疑心暗鬼になり、失敗のきっかけになってしまうことがあります。
ふだんから、なんとなく弾き流しているところをなくすことが、当日の緊張緩和に大きく役立ちます。指先や手首だけでなく、腕や首・背中・腰、そしてペダルを踏むつま先まで、動きや感覚をチェックしておくこともお忘れなく!
■どこからでもしっかり弾けるようにしておく
調子よく弾いていたのに、思いがけず間違ったり止まってしまい弾き直すことがあります。ところが、いったん流れが止まると途中から弾けずに、結局もう一回最初から弾き始めたという経験はありませんか?ふだんの練習で、曲のどこからでもしっかり弾けるようにしておくと、万が一、本番で失敗してしまった時でもあわてずに立て直せる確率がグッと高まります。そして、その安心感が当日の緊張をコントロールする支えとなります。
■不安な部分を早い時期に克服しておく
しっかり準備ができていれば、発表会当日の目標は「いつもどおりに弾く」ことです。でも、直前になっても音を頻繁に間違ったり、止まらずに弾けないなど不安の多い状態だと「いつもどおり」ではなく「いつもより上手に弾く」ということが目標になり、緊張の壁を乗り越えるどころか、逆にプレッシャーが緊張の壁をより高く厚いものにしてしまいます。
「これだけ練習したのだから、それで失敗するなら仕方ない」と思えるぐらいしっかり準備しておくことで、緊張した時のコントロール力に大きな違いが出ます。
■リハーサルをしておく
練習の段階で不安要素を克服してしっかり弾きこんでおくことが一番の緊張対処法
人前で弾いてみると、一人で練習している時には間違わないところでミスをしたり、強弱やテンポのコントロールが甘くなるなど、本番に向けての練習課題が見つかります。誰かに聞いてもらう機会が持てない場合は、練習室を借りていつもと違うピアノで弾くだけでも良いリハーサルになるので是非試してみてください。
発表会当日の緊張に対する対処法
発表会で緊張した時に、自分に起こり得ることをどんな小さなことでも構わないので思い出せるだけすべて書き出してみましょう。そして、想定したことに対して対処法を予め考えておきます。「準備してある」という安心感は、緊張をコントロールする上で大きな強みとなります。以下、発表会でよくありがちな緊張した時に起こる症状と対処法の例です。これを参考に、自分が緊張した時の状態を予想して対処法を考えておきましょう。■手が冷たくなる
手が冷たくなる前に、カイロを用意して握っている。手をグーパーしたり指をバラバラに動かすなどして冷たくならないようにする。
■体がかたくなる
自分の出番が近づいたら、ジッと椅子に座っていないで肩を上下させたり、首や腕を回すなどして体をほぐす。弾く直前にゆっくりと深呼吸をする。
■指が思うように動かない
いつもよりゆっくり目を心がけて弾く。緊張しているとふだんより鼓動が速くなっているので、自分ではいつもと同じテンポで弾いているつもりでも、実際には速くなっているものです。緊張して指の動きが硬くなっているうえに、いつもより速く弾いているので失敗する確率はグッと高くなってしまいます。
そして、失敗すると更に緊張が高まり次の失敗を誘発してしまうという残念な結果になります。本番では「ゆっくり目」で弾いてちょうどいつもと同じぐらいのテンポだと心得て弾くようにしましょう。
■指や足が震える
おへそやお尻など下半身にグッと力を入れる。震えていることに動揺して、更に緊張の度合いが増してしまうものですが、それも想定内のこととして覚悟していれば怖くありません!
震え始めたらグッと下半身に力を入れてみてください。緊張すると気持ちがあがってしまい、体の節々に思うように力が入らなくなりコントロールしづらくなります。しかし、お腹やお尻をグッと引き締めることで、神経がそこに集中するのと同時に、重心が椅子の上に乗ってくる感覚が得られるはず。指先や足の震えがそれで完全に止まることはなくても、対処法を思い出した段階でコントロールする冷静さを取り戻しているということです。
■喉がカラカラになる
意識的に水分をとる、飴をなめる。当日は弾くことだけで頭が一杯になってしまい、意外にこのような当たり前のことに気が回らないものですが、この些細なことが落ち着くきっかけになったりするものです。
■順番が近づくと不安が増して怖くなる、気持ちが舞い上がってしまう
録音しておいた自分の演奏を聞く。発表会など複数の演奏者が順番に弾く場では、自分の出番まで他の人の演奏が聞こえることで緊張が増し集中できないうえに、テンポなど調子が狂ってしまう場合があります。
他の人の演奏を聞くことも大切なマナーですが、直前になったら自分のベスト演奏ができるように努めることが最優先!予め録音しておいた自分の演奏を聞くことによって、いつものテンポや注意すべきところの確認ができ、気持ちが落ち着く助けになります。
メンタル面(考え方)での対処法
■「これをすれば大丈夫」というおまじない的な決め事をもつスポーツ選手が試合前に「これをすれば大丈夫」というゲン担ぎ的なことをするという話しをよく聞きます。例えば、野球のイチロー選手はグランドに入る時に必ず決まった足から入る、バッターボックスに入ったら毎回厳密に同じ動きをするなど、多くの決め事をもつことで有名。
「ただのおまじない」と言ってしまえばそれまでですが、たとえば、練習の時から「弾く前に鍵盤の端から端までしっかり見てから弾き始める」というような動きを習慣づけておき、本番でもまったく同じ動きをすることで、気持ちが舞い上がらずに平常心を保つ助けになることがあります。
■失敗したところよりも演奏全体の印象が残る
演奏者は、ちょっとしたミスでも大きな失敗をしたように感じてしまい、良く弾けたところよりも失敗したところの方が記憶に残るものですが、聞いている側にとっては個別のミスよりも演奏全体の印象の方が強く残るものです。失敗したことに動揺して、その後の演奏に影響してしまうほど悔しいことはありません!
思うように弾けないところがあっても、すぐに気持ちを切り替えその後の演奏に全力集中しましょう。そのためにも、曲のどこからでもしっかり弾けるように日頃から練習しておくことが大切です。
■お客様は敵ではない
客席に座っている人をジャガイモなどの野菜だと思うことや、手の平に人という字を3回書いて飲むと緊張緩和の役に立つという話があります。それが実際に効くかどうかは人によってさまざまですが、考え方ひとつでプレッシャーから解放されたり気持ちが和らぐことがあるものです。当たり前のことですが、お客様は敵ではありません!演奏者の粗探しをしているわけではなく、好意を持ったあたたかい目で演奏者を迎えてくれているはず。
そして、客席との間にフレンドリーな空気を作るには、演奏者側にも努力が必要です。何事も第一印象が大切!緊張しているからと言って、かたい表情で目線も上げずお辞儀もそこそこに弾き始めるのでは、お客様の演奏を楽しもうという気持ちも萎えるもの。どんなに緊張していても、しっかり前を向いて登場し明るい表情でお辞儀をしましょう。良い印象を演出することがすなわち客席との距離を縮め、自分が心地よく演奏するためのプラス要因となります。 ■ネガティブな考えを持たない
よく弾けているのに、失敗するイメージを思い浮かべ「きっとダメだ」とネガティブな方向に自分を陥れてしまう人がいます。しっかり準備ができている場合、最終的に本番での明暗を分けるのはメンタル的なこと、つまりいかに自分の気持ちを前向きに持って行けるかということです。
止まってしまったらどうしよう、間違った音を弾いたらどうしようなどと失敗するシーンばかりを想像する人は、まだやってもいない失敗を疑似体験していることになります。そうすると、不安ばかりが膨らみ緊張に拍車がかかるので、実際に失敗する確率も高くなってしまうのです。本番が近くなったら「失敗しない、絶対大丈夫」とポジティブな態度を心がけましょう。結果は必ずついてきます!
【参考書籍】
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