池を中心に自然と歴史、
静けさが印象的な住宅街が広がる

池

池ではボート遊びを楽しむことができ、カップルはもちろん、親子連れの姿も多い(クリックで拡大)

洗足池(大田区)は日本人が大好きな桜の名所のひとつ。時期になると東急池上線洗足池駅と中原街道を挟み、向かい側にある池の周りを桜が彩ります。池のほとりにはその名も桜山という、こんもりした高台があるほどで、桜の時期だけでもこの近所に住みたいという気持ちになります。

 
藤棚

池の近くの住宅街で見かけた見事な藤棚。植栽のきれいなお宅が多い(クリックで拡大)

もちろん、この場所が素晴らしいのは桜の季節だけではありません。新緑、紅葉に水生植物の花々、冬場の渡り鳥の姿なども楽しめますし、池のほとりから北側にかけては手入れの行き届いた植栽のある大きな住宅などがあり、散策途中にみごとな藤棚を見つけてうっとりすることも。子どもがいる家庭なら、ボートも楽しいアトラクションでしょう。都内有数の池を中心に、都会近くとは思えないほどの自然を満喫できるのです。

 

洗足ながれ

洗足池より下流、街中を流れるせせらぎ。両側は遊歩道になっており、歩くのが気持ち良い空間(クリックで拡大)

洗足池は武蔵野台地の南端に位置しており、台地の端からの湧水を水源としています。そのひとつとして、今も一部を見ることができるのが、大田区と目黒区の境近くにある清水窪という湧水からの流れ。流れの大半は暗渠になっているものの、池のすぐ近くでは開渠となり、流れる姿を見ることができます。この流れは洗足池からさらに南側に向かい、最後は呑川と合流、さらに海老川から東京湾に注いでいます。洗足池から先も一部には流れを見ることもでき、水と緑のある風景が楽しめます。

 

袈裟掛けの松

袈裟掛けの松のある妙福寺境内には古い石造なども残されており、竹藪には筍も(クリックで拡大)

現在でも都内屈指の規模の洗足池ですが、かつてはもっと大きかったようで、池上、池尻、池沢、上池台など周辺の池の付く地名はここに由来するとも。洗足の由来としては池が水源として灌漑に利用されていたことから千束分の稲が免税されていたことにちなむという説、寺領の免田だったため、千束の稲が免税されていたという説、日蓮上人が池上に向かう時にこの池で足を洗ったという説などがあります。中でも人口に膾炙してきたのは日蓮上人がという説。実際、池の畔にある御松庵妙福寺境内にはその際、袈裟を掛けたという松が残されています。この松は歌川広重の名所江戸百景『千束の池袈裟懸松』にも描かれており、当時から洗足池は行楽の地であったことも分かります。

 

池月橋

中央に見えるのが池月橋。名馬にちなんだ橋だ(クリックで拡大)

また、池にかかる三連の太鼓橋の向こうには千束八幡神社があり(なぜか、こちらは千束)、ここには名馬池月の碑も。この馬は源頼朝がこの地で野営した時に巡り合った馬で、その後、宇治川の合戦で佐々木高綱が乗って有名な先陣争いを繰り広げたことで知られるようになります。遠く宇治川の戦いと洗足池がこんなところで繋がるとは、歴史とは面白いものです。

 

勝海舟夫妻の墓所

勝海舟夫妻の墓所。意外にひっそりとした場所で、別邸跡の案内板も近くにあった(クリック)

池の周囲にも多くの史跡が残されています。有名なところではこの地に別邸を構えていた勝海舟夫妻の墓所。墓所に隣接しては、親交が深かった西郷隆盛を悼んで勝海舟が建てた西郷隆盛留魂祠もあります。

 

鳳凰閣

周囲は空地になっており、ぽつんと取り残されている印象が強い鳳凰閣(クリックで拡大)

個人的には池から少し離れたところに建つ、鳳凰閣(旧清明文庫)なる建物が気になるところ。これは1933年(昭和8年)に清明会という東洋文化を研究する団体が文庫兼講堂として建てたもので、クラシカルな趣の昭和初期の会館建築です。現在は民間の会社が所有しており、外観だけは眺められるものの、活用されているとは言い難い状況。何か、活用の手はないものかと思います。

住環境には恵まれているものの、
利便性にはいささか不利な点も

商店街

池の反対側、駅の裏手から始まる商店街。一応の日用品は揃う。小さなスーパーも2軒ほどあった(クリックで拡大)

さて、自然と歴史には恵まれた洗足池周辺は静かで住環境には恵まれていますが、利便性となると微妙なところ。駅周辺にはわずかながら商店街があり、日常的な買い物に必要な店はありますが、充実しているとまでは言いにくい状況。ただ、中原街道沿い、池上線の他の駅近くには大型スーパーもあり、駅間がさほど遠くないことを考えると、自転車利用などで買い物に行けば、それほど不便ではないのかもしれません。

 

坂の多い地形

洗足池から下流側はこうした坂の多い地形が続く(クリックで拡大)

住宅選びで考えたいのはこのエリアの地形は北から洗足池、そしてその南側へと下がっており、かつ洗足池を挟んで谷状になっているということ。場所によっては台地上とはいえ、地盤があまり強くないことも考えられますから、住みたい場所が周囲からみてどのような場所にあたるかは意識しておく必要があります。周囲からみて底、谷にあたる場合にはそれに対応した基礎、建物になっているかどうかをチェックしてください。

 

区立図書館

池のほとりには区立図書館もあり、休日には親子連れで賑わう洗足池周辺(クリックで拡大)

では、東急池上線洗足池駅周辺の住宅事情を見ていきましょう。

 

住宅供給は新築、中古、
マンション、一戸建てともに豊富とはいえない状況

新しい建物

新しめの建物は、池から離れた下流側に多く目立つ(クリックで拡大)

古くから開かれてきた土地のため、すでに利用できる場所は利用されており、空地は少ない場所です。そのため、住宅の供給は中古も含めてそれほど潤沢ではありません。まず、新築マンションで言うと、大きくても数十戸程度の規模までしか建つことは少なく、価格はファミリータイプ、70平米台の3LDKで考えると7000万円以上。1億円に近くなることもあり得ます。

 
古そうなマンション

洗足池の周辺には古いマンション、大きな一戸建てが多く、この地域では一等地とされてきたことが分かる(クリックで拡大)

中古も数は少なく、また、あまり広い物件はそれほど市場に出てきません。実際にはかなり広めの物件があるはずですが、比較的よく供給されているのは60平米前後まで。価格は築年数にもよりますが、4000万円前後です。

 

一戸建てのチラシ

街中で見かけた一戸建てのチラシ。小さな区画が多いので、1戸、2戸という現場が大半(クリックで拡大)

一戸建ては新築、中古とも5000万円以上が目安。もちろん、上を見始めたら高額な物件もありますが、こちらもそれほど数はありません。ただ、新築建売一戸建てでこのエリアで5000万円台だと、土地面積が30平米台などととても小さく、階段の多い住戸になってしまいます。使い勝手を考えると、微妙でしょう。

 

区の施設

駅近くには図書館以外にも区の施設があり、そうした点での利便性は悪くない(クリックで拡大)

賃貸は単身者向きが中心でワンルームマンションが7万円台後半から。2DKで12万円~、3DKになると15万円ほどから。高額な一戸建て賃貸も少なくない地域で、庭付きの一戸建てなどもあります。賃料は20数万円~。外国人向けに建てられた広い物件も散見されます。

 

目立つ建物

人気の物件は中原街道の右手、中心にある、人目を惹く建物(クリックで拡大)

ちなみに中原街道沿いには非常に目立つ、デザイナーズ賃貸があり、空きのなかなか出ない人気物件。賃料は15万円~、全戸メゾネットという物件で洗足池の緑を見下ろす眺望も楽しめるそうです。

 
洗足池駅

中原街道に面しているため、駅自体は非常にコンパクト。初めて見るとちょっとびっくりしてしまうかもしれない(クリックで拡大)

10分ちょっとも歩けば、隣の駅という、非常に駅間の短い池上線。どの駅も静かで落ちついた暮らしが楽しめますが、中でも条件に恵まれているのは洗足池周辺。利便性よりも毎日の静かでリラックスした暮らしを優先したい人にはお勧めの街です。





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