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ダウンタウンの「なう」はどこへ向かっているのか?(2ページ目)

前回、前々回と又吉直樹「火花」について述べてきましたが、現在の笑いを真面目に考えていくとどうしてもダウンタウンに行き当たってしまうんですね。という訳で、締め括りの意味を込めて、ダウンタウンの「なう」に肉薄してみたいと思います。

広川 峯啓

執筆者:広川 峯啓

お笑い・バラエティ番組ガイド

「40歳引退宣言」の真意は?

世紀をまたいでも一向に勢いの衰えないダウンタウンですが、ベストセラーとなった「遺書」の中で、松本人志が放った爆弾発言「40歳になったら引退する」は、お笑いの世界に衝撃をもたらせました。撤回した理由については、最近「ワイドナショー」の中で「30代のうちにもっとやれると思っていた」と、まだやり残していることがあるとの理由を語っています。

本人の言葉を真っ向否定する訳ではありません。しかしこの弁明の裏側には、常に新しい笑いを追求してきたダウンタウン松本が、年齢を重ねることで能力や熱意が減退してしまうのではという「恐れ」が、全盛期の時からあったのではないでしょうか?

今のダウンタウンの番組の傾向を見ると、コンセプトは様々ですが若手芸人やタレントの面白さを引き出す構成のものが多くなっています。芸人世界で世代交代が置きにくい現状では、非常に有意義な取り組みだと思いますが、一回限りの特番でもいいのでダウンタウンが中心になった新作コントの見たいと願うのは贅沢なことなんでしょうか?

最後に蛇足的な付けたしを

又吉直樹の「火花」を読んだ方は、終盤部分での神野の変貌ぶりに大きな衝撃を受けたかと思います。あの場面は当ガイドに1本の印象的な映画を思い出させました。松本人志監督第4作目にして、現時点での最新作である「R100」です。

あらすじ等はすっとばします。作中にベテラン俳優・高橋昌哉演じる100歳の老監督が登場しますが、彼の作品は周囲からも全く理解されません。さらに「私の映画は100歳にならないと理解できないだろう」という発言が、さらにスタッフの苛立ちをつのらせます。つまり彼は「自分以外には理解できない」とうそぶいてるんですね。

この老監督の姿はどうしたって松本自身を連想させます。自分が本当に面白いと思って作った作品が、ほとんどの観客からソッポを向かれ、だったら最初から誰にも理解できない映画を撮ってやろう。そんな呟きが聞こえてきそうな作品でした。ひょっとして、神野が小説の冒頭で発した一言「楽しい地獄」とは、この映画的な世界なのかも。
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