ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

開幕!『アラジン』観劇レポート&演出家C・ニコロウ(3ページ目)

5月24日、ついに開幕した大作『アラジン』。ゴージャス極まりないと話題の本作はいったいどんな舞台なのか、観劇レポートをお届けします。また5月22日に行われた演出・振付ケイシー・ニコロウの合同インタビューレポートも掲載。観劇後にお読みいただければ、より楽しく作品を反芻いただけること請け合いです!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


“僕は日本版ジーニーの大ファン”

ケイシー・ニコロウさん(C)Marino Matsushima

ケイシー・ニコロウさん(C)Marino Matsushima

――舞台版のジーニーには何度も「自由になりたい」という台詞がありますが、その意味は?

「本作はアラジンとジャスミンのラブストーリーというだけでなく、アラジンとジーニーの間にもラブストーリーがあります。アラジンはジーニーを自由にするときに思い切り成長をとげるわけです。

ジーニーのキャラクター自体、舞台版では変更しました。アニメ版のはじめの構想では、ジーニーはキャブ・キャロウェイというアフリカ系アメリカ人ジャズ・シンガーをモデルにしていましたが、結局ロビン・ウィリアムスが演じ、異なるイメージになったのです。舞台化にあたってはアイグルハートというオリジナルキャストが素晴らしい声を持つアフリカ系の俳優だったことで、ロビン・ウィリアムスとは対極の、キャロウェイ的なキャラクターに戻せたと思います。

でも日本のジーニー(瀧山久志さん)も僕は大好きで、彼は『アラジン』のエネルギーにとても合っていると思います。お客さんに愛されていることもわかるし、存在感もすばらしい」

――本作はコメディということですが、日本版を拝見して、コメディというより感動作と思えました。

「それは俳優、そして翻訳に負う部分が大きいのではないでしょうか。みんなのエネルギーが有機的にからみあってそういう方向性になったのでは。演出そのものはそう変わっていません。同じブロードウェイ版でも新しいキャストが入ってくればその人の良さが出るように変えていきます。俳優が自分でこうしたいということもありますしね。最悪なのは俳優たちにNYと同じようにやれということ。感性が違うのだから当然のことです」

――今回、日本版上演にあたり、ブロードウェイ版にどのように手を入れましたか?

「日本でもアメリカと同じように笑っていただけるようにと、脚本のジョークやコメディ部分、特にオチに手を入れました。例えば、魔法の洞窟の場面、NYではYoutubeで有名な言葉をオチにしているけど、こちらではそれ自体を皆さん知らないので変えてあります」

――ジーニーの“Friend Like Me”で、いろんな演目を引用している部分がありましたが、どんな意図があったのですか?

「映画ではロビン・ウィリアムスのジーニーが次々に姿を変える部分があって、舞台版ではいくつもの演目を出すという手法でそういったものを体感してもらえればと思ったんです。アラブ以外の場所にも逸脱していいナンバーなので、振付的にもシアターダンスに限らずいろんなものを盛り込みました。何より、笑いが起こせる起爆剤となるよう考えました。7分半もあるナンバーなので、飽きが来ないよう、どんどん盛り上げて行かないといけません。途中、ジーニーがアラン・メンケン・メドレーを歌う場面がありますが、ここは実はアンサンブルが裏でタップシューズを履く時間。でも逆にナンバーの目玉になりましたね(笑)」

――ジーニー役にはどんな役者がふさわしいでしょうか?

「自分自身でいることに心地よさを覚える俳優。そして“できる”人。でも一番大事なのはハート。方向性はどちらを向いてもいいけれど、観客を物語に引き込む役割ですが、舞台に出てきたときに観客が恋せずにはいられない人でないと難しいですね。やっていることは一つ一つ素晴らしいのに感情移入できない役者っていますからね(笑)。ジーニーは舞台にでてきた瞬間に観客と心が繋がる人でないと、と思います」

――ご自身でジーニーを演じたいとは?

「思いませんよ!(笑)。でもアイグルハートが稽古でよく僕の真似をやっていたなあ。」

*****
フランク・ワイルドホーン級(!)の、がっちりとした体格のケイシー。どの質問にも大声で淀みなく答える彼の姿には、“売れっ子演出家”のオーラが漲ります。その彼が太鼓判を押す日本版『アラジン』、いよいよ明後日、開幕です!(開幕翌日に観劇レポートを追記掲載の予定ですので、お楽しみに!)

*公演情報*『アラジン』電通四季劇場「海」5月24日開幕

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