雨の日の頭痛・めまい……天候が原因で症状が出る「気象病」とは
雨の日に頭が痛くなることはありませんか?
気象の変化によって症状などが悪化する病気を総称して「気象病」と呼びます。気象病は医学的病名ではなく、一般的な名称になります。気象病には、もともとの持病の症状が悪くなるものと、持病もないのに自律神経の乱れによって症状が出るものがあります。気象病と関連がある持病としては、めまい、狭心症、低血圧、喘息、うつ病などが挙げられます。
また、昔から「雨の日は古傷が痛む」と言ったりもしますが、天気によって出たり消えたりする痛みは「天気痛」と呼ばれます。普段から痛みの原因となるような症状を持っている場合、気象の変化で痛みが悪化することがあります。
2015年に行われた愛知医科大学の研究によると、日ごろから3カ月以上続く慢性的な痛みを持つ20歳以上の人のうち、約半数近くが、悪天候時や寒さによる痛みの悪化を訴えたと報告されています。
交通事故のあとのムチウチの痛み、過去の怪我や手術による傷あとの痛み、古傷でなくても、頭痛、首や肩の痛み、関節痛、が出ることがあり、特に気圧が低くなることで悪化することが多い傾向があります。実際に京都大学の疫学研究でも、関節リウマチの患者は気圧の変化が関節の痛み・腫れと関係しているといった報告があります。
2015年の岡山大学の研究では、慢性歯周病が急激に悪化するのは、「気圧変化」や「気温上昇」の1~3日後であることと報告していますので、気象病は、天気が変化する前後に起こることもあります。
<目次>
- 気象病の症状はさまざま・原因は自律神経の乱れ
- 気象病・天気痛の対策法・治療法酔い止めや鎮痛薬が有効なことも
- 気象病の予防法・対策法室内の気圧や高層階の影響も
- 部屋の気圧を上げることは可能? 高層ビルやタワマン頭痛も天気痛と関連
気象病の症状はさまざま・原因は自律神経の乱れ
さまざまな症状がある気象病ですが、共通する原因は、心理的ストレスを含めて、私たちの意志とは関係なく働いている「自律神経」にあると言われています。自律神経の中には、心身の活動を高め、痛みにも関与している「交感神経」と心身を休息させる「副交感神経」があります。心理的ストレスや気象の変化でふたつの神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になると、頭痛などが起こることになります。気象病の中で、天気によって頭痛が出たり消えたりするのが天気痛です。この原因として、気圧の低下が身体のバランスや聴覚に関係する内耳の気圧センサーで感知され、交感神経が優位になります。耳に頭痛の原因があったのです。
気象病はどの年齢でも起こりますが、痛みは女性に多い傾向があります。
気象病・天気痛の対策法・治療法酔い止めや鎮痛薬が有効なことも
まず、めまい・狭心症・低血圧・喘息・うつ病といった疾患がある場合は、しっかりと原疾患を治療することが必要です。その上で、気象の変化によって悪化した場合は、各疾患に合わせた治療を強化していきます。例えば、喘息では喘息発作が起こりやすくなるので、一時的に予防薬の量や種類を増やすことも必要ですし、発作発生時に対する治療も必要になります。めまいなどの症状はもちろん、天気痛の場合も、内耳に作用する薬や乗り物酔い止めのような薬を使用することで、効果的な治療になることがあります。
痛みがあれば、鎮痛薬を使用すると効果があることもあります。特に、慢性頭痛を持っている人は、気圧の変化で痛みが誘発されることがあります。
これらの治療は、可能であれば症状が軽いうちから行った方が効果的です。
気象病の予防法・対策法室内の気圧や高層階の影響も
気象病の場合は、天気によって原疾患が悪化しますので、それをしっかりと治療しておくことが予防にもつながります。特に天気痛は気圧の低下が原因ですから、自分の痛みと気圧の変化を知ることも重要になってきます。可能なら、天気と自分の痛みを日記のように記録しておくとよいでしょう。気圧は天気と相関します。晴天時には高気圧ですし、雨天時には低気圧です。さらに、雷雨・豪雨・台風などでは気圧はかなり下がってきます。こうした天気の時の痛みの程度を知っておきましょう。
低血圧が予想される場合は、調子が悪くなる可能性を考え、外出を控えるなどの予防も必要になってきます。いつ来るかわからない痛みに対する不安はストレスを生みます。このストレスで、さらに痛みが増すこともありますので、痛みが出る日を知ることも大事といえます。ただし、家に引きこもるよりは、時に外出でリフレッシュしたり、何か趣味などの気晴らしができれば、痛みが軽減することもあります。天気予報には、常に注意しておきたいものです。
自律神経を整える意味で、バランスの良い食事として、ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛、マグネシウム、鉄などを含む食事を摂るようにしましょう。
部屋の気圧を上げることは可能? 高層ビルやタワマン頭痛も天気痛と関連
「部屋の気圧を少し上げることで、天気痛がよくなった」という報告もあります。とはいえ、自宅で気圧を上げるということは簡単にできるものではなく、現実的ではありません。現時点では室内の気圧を上げることができるのは、一部の施設の設備くらいです。また、高い建物のエレベーターの昇降による気圧の変化で、痛みが出てくることがあります。もしスカイツリーや東京タワー、タワーマンションに登って、頭痛やめまいがするようなことがあれば、天気痛かもしれません。
特に梅雨や台風の季節は気圧の変動が多くなり、湿度も上がることで体調を崩すこともあるかと思います。天気痛、気象病には、早めの対策が有効ですので、鎮痛薬などを事前に用意しておきたいものです。