皮膚の「できもの」これ何!?
皮膚の「できもの」には実に様々なものがあり、ほくろのようによくあるものから、世界でも数例しか報告のないようなできものもあります。今回は、前回に引き続き、よく見かけるできものの一部をご紹介します。表皮母斑 −皮膚のザラザラ−
「表皮母斑」は生まれた時、または幼少期から認められる表皮の過形成による母斑(アザ)です。淡褐色または茶褐色のざらざらとした盛り上がり(丘疹)や小結節が集まって大小の局面を形成しています。限局型(疣状母斑)、広範型(序列性母斑)、炎症型の3つのタイプがあります。稀に、中枢神経症状や骨異常を伴うことがありますが、多くの場合は生涯あまり変化せず、そこから腫瘍が出来ることもほとんどありません。そのため、様子を見ることが多いです。
見た目が気になる場合は切除したり、レーザーやメスで皮膚を削ったり、凍結療法、電気凝固などで治療を行います。
表皮母斑
表皮母斑(序列性母斑)
脂腺母斑 −あれ?髪の毛が生えていないところがある!?−
「脂腺母斑」は生まれた時、または幼少期から存在する母斑で、頭や顔によく出来ます。同じ母斑でも加齢と共に見た目が変化するのですが、生まれたときは円形脱毛症様に蒼白~黄色調であまり凹凸のない局面を呈しています。脂腺の発達する思春期以降になると、顆粒状に盛り上がり褐色へと変化します。そして注意したい点は、この母斑から皮膚ガンが出来る可能性があるということです。そのため、外科的治療で母斑をすべて取り除きます。
黄色腫 −上まぶたの黄色いできもの−
「黄色腫」は上まぶたの内側によく見られ、色は黄色で、平たく盛り上がったできものです。高コレステロール血症に伴い出来ることも多いのですが、約半数は高リポ蛋白血症は伴わず、その詳しい原因も分かっていません。徐々に大きくなるため、見た目を整える目的で治療を行います。眼瞼黄色腫
汗管腫 −目の周りのぼつぼつ−
「汗管腫」は、身体のほとんどの場所にあり汗を出す腺であるエクリン汗腺が増殖して出来たできものです。特に眼瞼周囲に左右対称性に、散在性に多発します。女性に多く、汗の分泌量が多くなる思春期以降によく認めます。直径1~3mm程度の正常皮膚色の小丘疹で、痒みなど自覚症状はありませんが、自然に消えることもありません。また、良性腫瘍ですので治療の必要はありませんが、見た目を整えるために液体窒素やCO2レーザーなどで治療が行われます。
軟性線維腫 −飛び出て引っかかるイボ−
「軟性線維腫」は首や腋窩、鼠径部などにできるほぼ正常な皮膚組織からできる柔らかい腫瘤です。- 首や腋窩などに多発する2,3ミリメートルのもの(=アクロコルドン)
- からだ(体幹)に単発で存在するやや大きいもの(=軟性線維腫)
- さらに巨大化して皮膚から垂れ下がるもの(=懸垂性線維腫)
老人性血管腫 −赤いホクロ−
鮮紅色をした点状の結節で、胴の部分(体幹)に多く認めます。20歳代からみられ、加齢とともに増加します。良性腫瘍です。ケロイド
瘢痕(きずあと)の線維成分が過剰に増殖すると、「ケロイド」や「肥厚性瘢痕」と呼ばれる状態になります。ケガ・やけど・手術創などの傷跡や、ニキビ・虫さされ・BCG接種など軽度の皮膚損傷でもケロイドになることがあります。ケロイドは当初のキズの範囲を超えて大きくなりますが、肥厚性瘢痕は多くの場合時間とともに落ち着き、当初のキズを超えて大きくなることはありません。鮮紅色から褐色の硬い腫瘤で、痒みや痛みがあります。
初期の治療は、ステロイド薬(貼り薬、塗り薬、局所注射)・飲み薬・圧迫療法・シリコンジェルシート療法などの保存的治療が第一となります。機能障害や病変が高度な場合のみ、外科的治療の後に放射線療法や上記の保存的治療を組み合わせて行うこともあります。しかし、安易な手術はさらに悪化することもあるため注意が必要です。耳たぶのケロイドは、術後再発の可能性がそれほど高くないため、手術を行うことがあります。
ケロイド(前胸部)
ケロイド(前胸部)
ケロイド(耳垂)
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■参考資料
- あたらしい皮膚科学 著者:清水宏 中山書店
- 皮膚病アトラス 著者:西山茂夫 文光堂
- 社団法人 日本形成外科学会
- 写真提供:神楽坂 肌と爪のクリニック