テクノポップ/アーティストインタヴュー

アーバンギャルドの地下出版(2ページ目)

やはりアーバンギャルドは、ロシア・アヴァンギャルドだった! 5月2日から全国ツアー「アーバンギャルド 2015 春を売れ! SPRING SALE TOUR」をスタートしたメンバー全員にツアーでしか買えない地下出版『少女KAITAI』について、その真意を伺いました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

トレヴァー・ブラウンふたたび

ガイド:
「KAI版」と「TAI版」からなる2種類のアートワークでジャケは、トレヴァー・ブラウンさんが再登場! 『少女は二度死ぬ』の対するインタヴューの際も、トレヴァーさんの作品についてはお伺いしましたが、やはり「少女」を描くのであれば、彼しかないという発想だったのでしょうか?
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少女KAITAI KAI版

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少女KAITAI TAI版


アーバンギャルド~今度は戦争です! (All About テクノポップ)

松永:
今作は初期衝動の復権がテーマでした。新メンバーおおくぼけいが加入し、新鮮な血が流れる新しいアーバンギャルドをお目にかけたい。そういう理由で、基本に返る意味もあってトレヴァーの作品を使用させて頂く事になりました。

トレヴァーの描く少女には決して媚びがなく、萌えもない。あるのは戦闘少女としての凛とした姿勢と、冷たい眼差しです。アーバンギャルドの描く「少女」も同じく。やはり巷をにぎわすアイドル文化やロリコン文化とは一線を画す自律する存在としての「少女」です。

浜崎:
初めての全国流通の作品『少女は2度死ぬ』のジャケをトレヴァーに担当して頂いた事が、自分たちの中でやはりとても特別でした。新メンバーのおおくぼけいの加入初作品は絶対にトレヴァーで行きたいと思っていました。ここから再スタートの気持ちという意味合いも強いし、あのジャケはアーバンギャルドのイメージを大きく植え付けてた要因の一つだと思っているので、新しく進化していくアーバンギャルドを予感してもらいたくて。
yokotan

浜崎容子


一度地下出版に立ち返ろう

ガイド:
今回の作品は、一般販売なし、5月2日からスタートする全国ツアー「アーバンギャルド 2015 春を売れ! SPRING SALE TOUR」でしか買えない。これは、一般流通を考えないで制約なしに作品を作りたかったとか…そういうことなんでしょうか? それとも、「とにかくライヴに来て!」という確固たる意思表示?

松永:
せっかく久々に細かく周る全国ツアーをするので、何か新体制の名刺になるような銀盤が欲しいと考えました。そこで、我々もなんだかんだメジャーの荒波に揉まれてもう何年か経つ訳ですが、一度「地下出版」に立ち返ろうと。特に歌詞の制約のないものを創ることは、いいカンフル剤になりました。と同時に、ここ数年過剰な自主規制が特に横行するメジャーな音楽業界に対し(自主規制ってのは言葉尻とは裏腹に、決してバンド自体が規制する訳ではありません。大人の事情、というものですね)オルタナティブな意思表示をしたかったわけです。もちろん我々はメジャーなフィールドでも活動を続けますが、アーバンギャルドの根底に流れるのはこういったアンダーグラウンドな血です。極端に血の流れるもの、毒の効いたものを創りたい季節だった。

ガイド:
「地下出版」…いい響きです。ソ連時代、「サミズダート」という名で体制の目を逃れて、多くの地下出版がなされてきました。そんなことを思い出します。

浜崎:
音楽制作の面でも制約が無いと言いつつも、やはり何者でもなかったインディーズの頃と今とでは意識が変わっている事を作りながら感じていました。以前なら気付かなかった部分に気を遣ったり、逆に誰も気にしないような変なこだわりが無くなっていたり。制作時間がものすごくタイトな中で高い集中力で持っていけた事も、良かったです。昔なら間に合わなかったと思います(笑)。

ライヴに来てほしい、という気持ちも勿論強いです。以前のアーバンと今のアーバンは全く別物になっている部分と、変わらない核の部分が更にアップデートしている部分が混在していて面白い事になっていると思います。アーバンの事好きだけどライヴに来たことが無い人は勿論、昔行ったけど今は行ってない人などにも見てほしいかな。バンドの活動休止、解散のニュースを見るたびに我が身の事のように考えさせられます。ずっと同じである事など不可能ですから。 今回のツアーとこの新作で新しい体験とアーバンギャルドがもっともっと進化していく過程をお見せできると思っております。
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