インディーズのヴィジュアルシーンにおいて街宣活動に用いられるツールのひとつとしてフライヤーが挙げられる。大きなメディアを介すことなく活動をしている彼らにとって、それはバンドの普及や動員の獲得に繋げるための欠かすことのできないツールのひとつ。
これまで、ヴィジュアル系バンドの多種多様な音楽性やステージングについて紹介してきたが、フライヤーひとつとっても、そこには各バンドの創意工夫が見られる。
そこで、ヴィジュアル系バンドの個性豊かなフライヤーをピックアップし紹介すると共に、現在のビラ配りに関する戦略、事情について探りたい。
21世紀型の街宣活動を行なう<Zillapark>
Zillapark
特に、キャパシティの大きな会場でライブが行なわれると、会場付近で観客を待ち伏せしているバンドマンの光景がよく見られる。そこでさまざまなバンドからフライヤーを受け取る訳だが、一際目を引いたのが、iPadを手にして街宣活動を行なっている<
Zillapark>のメンバーの姿だった。彼は手持ちのiPadからMVを流し、バンドをアピールしていたのだ。
iPadを用いて街宣
21世紀のテクノロジーを駆使したそのアイディアについて彼らに尋ねたところ、映像を用いることでよりバンドを伝えやすくなるのではないか、という狙いに加え、バンドの世界観上、Dr. RoAは話をすることができないため、彼についてはフライヤーではなく、映像担当の役割を担ったことが始まりだという。
Zillapark最新フライヤー
ビラ配りでは、ステージとフロアといった隔たりがなく、同じ目線に立った至近距離での接触になる。また配る側のバンドマンもすっぴんに私服という出で立ちでいることが多いからか、街宣活動といえどファンとメンバーが馴れ合っている光景を目にすることもしばしば。
そんな中、メンバーのキャラクターに応じた街宣活動の方法を編み出したことはもちろん、ステージを降りた場でもバンドの世界観を崩すことのない彼らの姿勢は感心に値する。
ヴィジュアル系らしさ敢えて封印。
フライヤーで他と差別化を計る<JASSY>
JASSY
現在のヴィジュアル系バンドのフライヤーは、豪華にフルカラーで印刷が施されており、インディーズと思えないほどの完成度の高さだ。紙を縦に使うか横に使うかはそれぞれだが、バンドのヴィジュアルがわかる最新のアー写が全体を占め、そこに直近のライブやリリース情報を記載しているものがほとんど。
CDショップへ出向くと「こんなにバンドがいるのか」と思う程、各バンドの最新のフライヤーがずらりと並べられている。ヴィジュアル系バンドだけに、彼らのヴィジュアルを推し出したフライヤーの多く並ぶ中、意表を突くレイアウトで目を引いたのは<
JASSY>のフライヤーだった。
JASSY最新フライヤー
なぜ、ヴィジュアル系ならではの自慢の美貌をフライヤーに掲載するのではなく、ある少年の表情をアップにしたものをメインにしたかバンドへ尋ねると「人の目に留まるデザインにしたかった」という回答の他、「(顔面偏差値的な意味で)他と戦っても負けるので!」と返ってきた。ちなみにこの少年はメンバーのBa.クリフの幼少期の写真とのこと。
どのバンドのフライヤーもパッと見て、衣装やメイク、文字の書体などの雰囲気から、激しいのかポップなのかなど、だいたいどんな音楽性のバンドなのかわかるような作りになっている。受け手もそれが自分の好きなジャンルかそうでないかという判断材料にしているが、彼らはそこでアー写を使わずにバンド像を伏せることで、他との差別化を計った。結果、受け手に先入観を持たせることなく想像を掻き立たせることに成功しているといえるだろう。
>>特に街宣活動に力を入れているバンドのフライヤーの中身とは!?